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 トヨタ自動車が市販化の意向を明かした水素エンジン車。電気自動車(EV)一辺倒だった電動化の状況が変化しつつある中で、内燃機関に軸足を置いてきた部品メーカーが開発を加速させている。

トヨタ自動車の水素エンジン車
トヨタ自動車の水素エンジン車
液体水素を使う試作車。富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久シリーズ2022」で初披露した。(写真:日経クロステック)
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 「日本でも取り組み始めたところだ」。こう明かすのは、ボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパン社長の三島邦彦氏である。日本の水素関連の顧客に対して、米BorgWarner(ボルグワーナー)のシステムや部品のノウハウでサポートしているという。

 ボルグワーナーFIS Japanカントリーマネージャー兼チーフエンジニアのHans Hardam(ハンス・ハーダム)氏によると、「水素だけでなく、合成燃料(e-Fuel)やアンモニアを使うエンジンなど、内燃機関の革新に関わる幅広いテーマの開発を進めている」という。

 さまざまな次世代エンジンの候補がある中で、水素エンジンの魅力はどこにあるのか。内燃機関部品を主力事業としてきたボルグワーナーとしては、インジェクターやターボチャージャーといった既存製品を活用できる点が大きい。

 水素エンジンは燃料電池車(FCV)と同様に原理的には二酸化炭素(CO2)を排出しない。一方でFCVと異なり既存のエンジンの延長線上にあり、FCVに比べて安価にできる可能性がある。ガソリンエンジン車のコストと比較すると、「FCVはシステムを刷新する必要があるため数倍と高いが、水素エンジン車なら1.2~1.3倍で済む」(ハーダム氏)と試算する。

 こういった特徴に着目し、ボルグワーナーは2つの拠点で水素エンジンの開発・検証を開始した。

 2021年7月15日――。フランス中央部の都市ブロワの拠点で、ボルグワーナーが自社設計した水素エンジンに火がともった。排気量1.5Lのガソリンエンジンをベースに、同社製のインジェクターを組み込んだ。このインジェクターは、圧縮天然ガス(CNG)車向けの製品を改良したものだ。英国の拠点では、排気量2.2Lのディーゼルエンジンがベースの水素エンジンを評価中である。

ボルグワーナーが水素エンジンを試作
ボルグワーナーが水素エンジンを試作
フランス・ブロワの開発拠点で評価している様子。(写真:ボルグワーナー)
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 フランスや英国の拠点での実験から、「インジェクターの取り付け位置や燃料系統の圧力など、燃料噴射システムを正しく構築することが水素エンジンでは特に重要」(同氏)であることが分かってきた。

 排ガスについても、「ほとんどの運転条件下で規制値を大きく下回ることを確認した」(同氏)。