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 ディスプレー技術の国際学会・展示会「Society for Information Display(SID) Display Week 2022」では、3次元(3D)映像を表示するいわゆる3Dディスプレーを展示会で各社が出展。約15年ぶりに3Dディスプレーが大きな盛り上がりを見せた。

 3D映像には過去3回の大きなブームがあった。具体的には1950年代の3D映画ブーム。これは、左右のレンズ部分に赤や青など色の異なる伊達メガネを使って3D映像を見せるものだった。

 次の大きなブームは1980年代。今度は赤青メガネではなく、偏光グラスを使って左右の目に異なる映像を見せる方式で、テーマパークでの「飛び出す映像」が人気を集めた。

3D映画が空前のブームに

 さらにその次が2006年ごろに始まった第3次ブーム。このときは、3D映像を見せる技術が多数開発された。映画館やテレビでは、メガネの偏光が円偏光になったり、「シャッター方式」と呼ばれる偏光の向きが時分割で切り替わったりする方式に分かれた。2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督の映画「アバター(Avatar)」は、それまでの「タイタニック」を超える世界最高の興行収入を上げ、空前の3D映像ブームを巻き起こした。

 メガネなしで3D映像が見られる裸眼向け3Dディスプレーも多数登場した。ディスプレーに「レンチキュラーレンズ」と呼ばれる微小なレンズアレーを被せる方式だ。この方式では、両目用の映像を多数の方向に出す必要から、3D映像の解像度が元のディスプレーの解像度の10分の1前後になってしまう。当時のディスプレーは、2K(1920×1080画素)が主流だったことやレンズの精度の低さから、粗くしかも不自然な3D映像しか見ることができなかった。

3Dメガネに視聴者が拒否反応

 こうした背景から、当時の裸眼向け3Dディスプレーはテレビにはほとんど採用されず、代わりに、シャッター方式の偏光メガネで3D映像を見せる3Dテレビが各社から発売された。ところが、ユーザーにとっては3Dメガネを家のリビングでかけることに対する抵抗感が強かった。しかも3D映像の撮影が難しかったことなどで、当初は多少あった3D映像を見せるテレビ番組が次第に減っていってブームは事実上終えんした。コンテンツの供給が続かないことも、3D映像ブームが続かない主要な理由の1つになっている。

 それでも、3D映像の火は完全には消えなかった。2012年ごろから「Oculus Rift」などゲーム用のVR(Virtual Reality)ゴーグルが一定の盛り上がりを見せ、現在はメタバース向けのヘッドセットとして発展しつつある。VRゴーグルでは両目に角度の異なる映像を容易に表示できるため、3D映像実現への敷居は低い。

 今回のDisplay Weekでは、VRゴーグルで命脈をつないでいた3D映像が再び、大型の薄型ディスプレーに戻ってきた格好だ。理由の1つは、ディスプレーの高精細化が進んだからである。現在、4Kはもはや当たり前で、8Kディスプレーさえも30万円前後で販売されている。ディスプレーがここまで高解像度なら、そこから多少解像度が低下しても3D映像の粗さは目立たなくなる。

BOEの裸眼向け100型超の3Dディスプレー
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BOEの裸眼向け100型超の3Dディスプレー
6m離れて見ることを推奨している(写真:日経クロステック)
台湾Innoluxが出展した視線トラッキング付き3Dディスプレー
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台湾Innoluxが出展した視線トラッキング付き3Dディスプレー
4Kディスプレーを用いて、2Kの3D映像を見せる。医療用で、臓器の映像などが立体的かつ明瞭に見える(写真:日経クロステック)

3D映像用に16Kディスプレーを利用

 Display Week 2022の基調講演に登壇した中国BOE Technology Group(京東方科技集団) Vice President and CTOのXu Xiaoguang (徐暁光) 氏も、同社の3Dディスプレー技術、最近は「Light Field Display」と呼ぶ技術についての取り組みを紹介した。BOEは16K×8Kディスプレーを“3D化”したとする。このディスプレーの寸法は32型と比較的小さく、精細度は極めて高い。視線トラッキング技術と組み合わせて、4K相当の解像度で3D映像を見ることができるとした。「マイクロレンズアレーも精密に設計し、しかも高屈折率の材料で製造した。クロストークなどがない本来の3D映像の再現を保証できる」(BOEのXu氏)。

中国BOE Technology GroupがDisplay Weekの基調講演で最新3Dディスプレーを紹介
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中国BOE Technology GroupがDisplay Weekの基調講演で最新3Dディスプレーを紹介
(写真:日経クロステックが撮影)