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 12歳で立ち上げた企業が米Microsoft(マイクロソフト)に買収され、14歳で同社の史上最年少の社員となったことで知られるJoshua Motta(ジョシュア・モッタ)氏が日経クロステックの取材に応じた。ジョシュア氏は、企業向けセキュリティー対策やサイバー保険などを手がける米Coalition(コアリション)のCEO(最高経営責任者)を務める。同社のサイバーモニタリングシステムはウクライナ政府が導入しているという。ウクライナ事情に詳しいジョシュア氏に、ロシアによるウクライナ侵攻後の世界のセキュリティー情勢を聞いた。

米Coalition(コアリション)のJoshua Motta(ジョシュア・モッタ)CEO
米Coalition(コアリション)のJoshua Motta(ジョシュア・モッタ)CEO
出所:Coalition

サイバー空間でも戦争が始まっている

 「ロシアがウクライナに侵攻した後、サイバー空間でも激しい争いが両国で繰り広げられている」とジョシュア氏は指摘する。それはハッカー集団を利用したサイバー戦争だ。両国のハッカー集団が政府やそれに関係する企業などにサイバー攻撃を仕掛け、多岐にわたりダメージを与えている。「今回の侵攻によりサイバー戦争の危険性が明らかになった。例えばウクライナ側は衛星のオペレーションや鉄道などのインフラ設備のシステムで被害を受けた」(ジョシュア氏)。

 重要な情報を操作したり、削除したりする情報戦も激しい。ジョシュア氏は、「ウクライナは情報戦を効果的に行っている。主役はゼレンスキー大統領だ。SNSを活用して直接国民に語りかけ、死傷者や爆撃を受けた病院の視覚的な情報を効果的に使って各国から支援を得ている」と説明する。

ハッカーのリソース不足でサイバー攻撃が減少

 ウクライナ侵攻が世界に与える影響はどうか。ジョシュア氏はウクライナ侵攻により世界中のサイバー攻撃の数が減少していると主張する。「民間企業のサイバー攻撃被害の保険金請求が、ウクライナ侵攻前後で減少している」と説明する。その理由として、多くのハッカーがロシアとウクライナのサイバー戦争に関わっているため、民間企業を攻撃する余裕がないという見立てだ。「当面の間、民間企業に対するサイバー攻撃は減少するとみている」(ジョシュア氏)。

サイバー保険の契約件数に対する保険金請求件数の割合
サイバー保険の契約件数に対する保険金請求件数の割合
出所:Coalition
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 ウクライナ侵攻によって、ハッカー集団の仲間割れも発生した。「ハッカー集団『Conti』は侵攻前、何千万米ドルと稼いでいた。しかし、侵攻が原因でロシア派とウクライナ派にグループが分裂してしまった」(ジョシュア氏)。このContiとは、ジョシュア氏は過去に直接交渉したことがある。「ずる賢い集団で、攻撃している組織に対してContiに金銭を支払うよう、ジャーナリストを利用してプレッシャーをかけさせる」という。