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 電気自動車(EV)に使う駆動用モーターの開発で、希土類(レアアース)の不使用や使用量削減に向けた取り組みが再燃している。自動車メーカー各社が打ち出した電動化戦略や、近年の原材料価格の高騰などを受け、リチウムイオン電池だけでなく、モーター材料の供給不足への懸念が出てきたからだ。レアアースは中国に偏在し、地政学的リスクもはらむ。レアアースを全く使わないモーターを開発するのか、あるいは、多くの電動車両が採用する永久磁石型同期モーター(以下、永久磁石式モーター)でレアアースの使用量を減らしていくのか、サプライヤーによって対応が分かれる。

 「トヨタ自動車など自動車メーカー各社が示すEVの販売目標を合算すると、モーターの使用量は膨大になる。現状ではとても供給が追い付かない。モーターの材料は奪い合いになるだろう」。ある素材メーカーの幹部はこう話す。

 トヨタは2030年にEVの世界販売台数を350万台にする目標を掲げる(図1)。欧州では、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)や欧州Stellantis(ステランティス)が同年にEVの世界販売を500万台規模とする計画を示している注1)

注1)VWは2030年に世界販売台数の5割をEVにする方針。同社の例年の販売台数を基にすると、同年のEV販売台数は500万台前後になる。

図1 トヨタが2021年12月に披露したEV
図1 トヨタが2021年12月に披露したEV
16車種のEVを展示した。(写真:トヨタ)
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 EVシフトの進展で、車載モーター注2)市場は拡大する見通しだ。調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)は、自動車メーカー各社が電動化目標を達成することを想定すると、2019年に約33億5000万個だった車載モーターの需要が、2030年には約60億個まで拡大すると予測する。

注2)ここでは、駆動用の主機モーターだけでなく、補機モーターも含み、大きさや出力は問わない。ただし、自動車向けのオーディオやナビゲーションシステムに使用されるHDD用モーターなどは対象外。

 現在、電動車両の駆動用としては、永久磁石式モーターが主流だ。ただ、同磁石の原料であるネオジム(Nd)や添加するジスプロシウム(Dy)といったレアアースは、生産が中国に集中する。米地質調査所(USGS)によると、2020年に世界で生産されたレアアースのうち58%が中国産である。Ndはここ数年、価格の高騰も続いている。

 国際エネルギー機関(IEA)は、レアアースの需要が2040年に2020年の3.4倍に達するとの予測を示しており、将来的には供給不足も懸念される。