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 営業利益が売上収益(売上高に相当)を上回る――。こんな異例の決算が話題となっている。企業向けソフトウエア開発・販売を手掛けるアステリアは2022年5月12日、2022年3月期の連結決算(国際会計基準)を発表した。営業利益は前期比320.3%増の34億円だったのに対し、売上収益は前期比10.4%増の29億円だった。

アステリアの売上収益と営業利益の推移
アステリアの売上収益と営業利益の推移
国際会計基準を適用(出所:アステリアの資料を基に日経クロステック作成)
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 同社は1998年の創業時から手掛けるソフトウエア事業、2017年に開始したデザイン事業、2019年から本格的に取り組む企業投資事業の3つを主な事業とする。「ソフトウエア事業が当社の中心で、基本的には2つの新しい事業がソフトウエア事業の成長を支える構造だ」と平野洋一郎社長は語る。

アステリアの平野洋一郎社長
アステリアの平野洋一郎社長
(撮影:日経クロステック)
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 ソフトウエア事業では受託開発を一切しない。異種システム間でデータをつなぐミドルウエア「ASTERIA Warp」など、自ら開発したソフトウエアを販売する。DX(デジタルトランスフォーメーション)の需要を取り込み、ソフトウエア事業の売上収益は前期比17.2%増の25億円となった。

 デザイン事業は顧客企業のDX戦略の策定・実行などを支援する。同事業は新型コロナウイルス感染拡大で海外顧客からの売り上げが落ちたことから前期比17.5%減の4億円だった。デザイン事業は減収だったもののソフトウエア事業が好調で増収となった。

企業投資事業で40億円の評価益を計上

 営業利益を前期比4.2倍に押し上げた最大の要因は、企業投資事業で通期合計40億1500万円の評価益を計上したことだ。同社は2019年に投資専門子会社である「アステリア・ビジョン・ファンド(AVF)」を米国に設立した。ソフトバンクグループ傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドにちなんで名付けたという。AVFは、イーロン・マスク氏が率いる宇宙企業の米SpaceX(スペースX)や先端AI(人工知能)開発を手掛ける台湾のゴリラ・テクノロジー・グループ、日本円に連動するステーブルコインの発行を手がけるJPYCなど6社に出資している。

 ゴリラ社は米ナスダックへの上場を申請しており、2022年7月の上場を予定している。アステリアはゴリラ社の株を14.8%保有する筆頭株主。出資先の中でもとりわけゴリラ社の評価額の増加が過去最高の営業利益を大きく後押しした。

 「保有株の評価益が大幅に増えたことによる営業利益の増加は、たまたまだと思っている」と、個人投資家向けに株価情報などを提供するストックウェザーの桜井英明「兜町カタリスト」編集長は指摘する。「出資先と技術連携することでのソフトウエア開発のスピードアップや、海外をはじめとする事業展開の拡大を図ることが企業投資事業の主な目的だと理解している」と桜井氏はみる。