半導体製造装置大手の東京エレクトロンが、技術者育成の“内製化”に力を入れている。現場技術者の訓練時間を2倍に増やすなど社内の技術力を高め、顧客である半導体メーカーの工場の安定稼働を支える。装置を整備する「フィールドエンジニア」のために訓練環境を増やしたほか、VR(仮想現実)技術を活用した訓練なども導入する(図1)。これまで不足していた実技訓練の環境を整えて技術者の競争力を高め、海外の競合企業にも対抗していく。
同社が育成に力を入れるのが、世界で4000人以上いるフィールドエンジニアと呼ばれる技術者だ。彼らは顧客である半導体メーカーの工場で製造装置の立ち上げから調整、改造、トラブル対応まで手掛ける。半導体の生産に欠かせない、いわば現場のプロ集団だ。半導体製造装置は自動車と同様に数万点の部品で構成し、ウエハーや反応炉を処理する薬液やガスの取り扱いも必要になるため高度な専門性が求められる。
現場技術者の訓練を倍増、競争力の軸に
東京エレクトロンは、フィールドエンジニアの訓練時間を6年間で2倍以上に増やすなど人材育成を加速している。国内の事業所や海外の現地法人では訓練用の装置も2倍近くに増やし、実機で作業を確認できる環境を充実させた。これまでOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に頼りがちだった教育制度を見直し、エンジニアの習熟に必要なトレーニング設備と期間を確保した。同社人事部人材開発グループグループリーダーの丸山松弥氏は、「十分に手を動かさないと技術者は育たない」と実技訓練の重要性を説明する。
若手や新しい装置を取り扱うエンジニアはまず、装置の組み立てや分解、部品交換といった基本的な作業から学んでいき、「ロボットの調整ができるか」「一人でメンテナンスをこなせるか」「トラブル対応ができるか」など業務に必要な多くの知見や技能を1つずつ身につけることでスキルを底上げしていく。装置によって、訓練期間が数日で終わるものもあれば、数週間かかるものまでさまざまだ(図2)。
「真空ポンプを動かしてください」「窒素を充填しているときに扉を開けないように」――。都内のトレーニングセンターでは、教師役の熟練エンジニアが日々、装置を動かしながら他の作業員に手順を説明している。熟練のエンジニアは「十数年前までは現場で先輩の背中を見ながら学んでいたが、今は教育制度が整ってきた」と語る。