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 日本製鉄が無線IoT(インターネット・オブ・シングズ)センサーを活用した製鉄所の設備監視システムの構築を進めている。広大な製鉄所に数百個のIoTセンサーを設置して無線ネットワークでつなぎ、設備の温度や振動といったデータを集めて異常を監視するシステム「NS-IoT」を、数千万円かけて構築した。2025年度までに九州製鉄所や関西製鉄所といった全6カ所の国内製鉄所に導入を目指す。まず2022年4月、東日本製鉄所の君津地区と鹿島地区に先行導入し、点検作業の効率化を進める。

 「設備の稼働状況データをスマホでどこでも簡単にみられる」「広大な敷地を歩き回って点検していたが、仕事が大きく変わった」。製鉄所の現場担当者は、新たな設備監視システム「NS-IoT」をこう評価する。従来は広大な土地に広がる設備を担当者が車などで移動して点検していた。日本の製鉄所は平均して1000万平方メートル程度あり、広大な敷地に石炭を置く場所から発電所まで様々な施設を有し、点検作業の効率化が課題となっていた。

広大な敷地をIoTセンサーで監視

 新システムの導入に当たっては設備工事の負担軽減が課題だった。有線接続するセンサーを設置すると電源や信号線などを敷設する工事を行う必要があり、費用と時間がかさむ。そこで1つ数万円程度の無線IoTセンサーを300個以上、重要設備や点検頻度が低い遠方の場所に取り付けた。センサーは振動・温度・湿度・電流・圧力など7つのメーカーから12種類を用意した。

無線IoTセンサー活用システム「NS-IoT」の概要
無線IoTセンサー活用システム「NS-IoT」の概要
(出所:日本製鉄)
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 異なるメーカー製のセンサーで集めたデータの集約や一元管理も課題だった。一般に様々なデータを検知するには、データごとに対応するメーカーのセンサーを導入する必要がある。センサーの数を増やすほど個別の監視システムが必要だった。そこで同社は通信の仕組みを解析して、1つの集約装置で異なるデータを収集できるシステムを独自開発した。集めたデータをクラウド上に蓄積し、点検担当者はスマートフォンで監視できる。君津と鹿島それぞれの設備の監視データも同じ画面で監視可能とした。

 「製造拠点別に横並びで設備の稼働状況を比較するのは難しかったが、極めて簡単になった」。日本製鉄の中山寛人デジタル改革推進部主幹はこう手応えを語る。従来は製鉄所ごとにセンサーデータを保持しており、拠点ごとにデータを分析していたが、多拠点の活用が可能となった。

 同社は2020年後半にシステムの開発プロジェクトに着手。企画や開発に1年半をかけ、2022年3月に完成した。

 効率を高めるために様々な工夫をこらした。一例がセンサーが収集したデータを別のセンサーに移すホッピングという技術だ。製鉄所内には地下や建物内など通信を遮断してしまう場所がある。そこで収集したデータを近くにある同メーカーのセンサーに転送していき、最終的に収集装置へ転送する。

 センサーは全て乾電池で動いており、電池の残量をシステムで監視できるようにした。残量を一元管理することで、交換作業の効率を高める。重点的に監視したい特定のセンサーのデータをタグ付けできる機能も整備し、重要設備の不具合を見逃さないようにした。