全2357文字

 国内鉄鋼大手がタッグを組んで水素製鉄の実現に向けた動きを加速させる。2022年6月15日、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の大手3社と金属系材料研究開発センター(JRCM)が、「水素製鉄コンソーシアム」の結成を発表した(図1)。製鉄に水素技術を導入する技術開発を進め、鉄鋼プロセスにおける二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指す。

図1 水素製鉄コンソーシアムのメンバー
図1 水素製鉄コンソーシアムのメンバー
日本製鉄副社長の佐藤直樹氏(左から2番目)が委員長を務める。(写真:水素製鉄コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]

 コンソーシアムの4者は人材や設備を共用し、組織の枠を超えた協力体制を築き、[1]高炉を用いた水素還元、[2]水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元、の大きく2つの技術開発に取り組む。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション(GI)基金事業」の一環として2030年度までに1935億円が助成される。

高炉のCO2排出量を水素で削減

 [1]高炉を用いた水素還元は、鉄鋼大手3社などがNEDOの委託事業として進めてきた「COURSE50」プロジェクトの拡大版といえる。高炉による製鉄はエネルギー効率が高く、高品質な鉄鋼製品の製造に向く。しかし、鉄鉱石の還元にコークスを使うためCO2排出量が多い。コークスの代わりに水素を利用できれば、排出するのはCO2ではなく、水(H2O)になる(図2)。

図2 高炉を用いた水素還元技術
図2 高炉を用いた水素還元技術
水素による鉄鉱石の還元は吸熱反応を伴う。(出所:水素製鉄コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、水素還元には技術的な課題がある。コークスによる還元が発熱反応であるのに対し、水素による還元は吸熱反応である点だ。つまり、吸熱反応を補うための調整や水素を加熱するなどのエネルギーが別途必要になる。COURSE50では、小型試験高炉を用いて常温の水素ガスによる還元に取り組み、CCUS(CO2の回収・貯蔵)技術を併用して30%のCO2排出量削減を実現した。

 水素製鉄コンソーシアムでは、まずコークス炉ガスから得た水素を含む常温のガスを用いて、高炉の水素還元技術を実機で検証する。いわばCOURSE50の実機適用である。日本製鉄東日本製鉄所君津地区の第二高炉に、同ガスを吹き込む設備を導入。2025年度下期に実証を始める。2030年までに、COURSE50と同様に水素還元技術などで10%以上、CCUSで20%以上、合計30%以上の排出量削減を目指す。

 加えて、さらなるCO2排出量削減を目指し、加熱した水素を用いた実証試験「Super COURSE50」も計画する。同君津地区にある、COURSE50で使った容量12m3の試験高炉を改造(図3)。還元材であるコークスの一部を加熱水素で代替する他、鉄鉱石の一部に直接還元鉄を使う。現在の高炉と比べてCO2排出量を50%以上削減する計画だ。

図3 Super COURSE50(右)
図3 Super COURSE50(右)
COURSE50(中央)で使用した試験高炉を改造する。(出所:水素製鉄コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]

* 直接還元鉄
主に天然ガスで鉄鉱石を還元して得られた鉄のこと。コークスを使わないためCO2排出量を削減できるとされる。

 いわゆるメタネーションによる水素還元技術にも取り組む(図4)。JFEスチールの東日本製鉄所千葉地区に、容量150m3規模の「カーボンリサイクル試験高炉」を建設。同炉で生じるCO2と水素を反応させてメタン(CH4)を生成し、還元材として繰り返し利用する技術を実証する。

 還元材であるコークスの一部を生成したメタンで代替し、CO2排出量を抑える。2026年度までに同炉の試験操業を計画し、こちらも現在の高炉と比べてCO2排出量を半減させる計画だ。

図4 カーボンリサイクル試験高炉
図4 カーボンリサイクル試験高炉
コークスの一部をメタンで代替する。(出所:水素製鉄コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]