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 「経済安全保障の観点で中国のオフショア拠点を見直す日本企業が2021年秋から増えている。2022年に入って経済安全保障推進法の成立に向けた議論が進むなか、当社への問い合わせも増えた」。PwCコンサルティングの山本直樹パートナーはこう語る。PwC Japanグループは約100人の専門家からなる「経済安全保障・地政学リスク対策支援チーム」を組成した。山本パートナーはその主要メンバーの1人だ。

 2022年5月11日、経済安保推進法が成立した。政府が同法の制定に向けた有識者会議を立ち上げたのは2021年11月のことだった。この間、中国にオフショア拠点を持つ少なくない企業が、ひそかに検討を進めているという。近年、中国の人件費高騰を理由に大連市や上海市などにあるオフショア拠点の移転を検討する動きが広がっていたが、脱・中国オフショアの理由に経済安保の確保も加わった格好だ。

目に見えて動きがあるのは金融機関

 「オフショア拠点の見直しで、目に見えて動きがあるのは金融機関だ」と山本パートナーは明かす。背景には、経済安保推進法を構成する4つの柱の1つ「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保」への対応がある。金融や電気・ガスなど14分野の基幹インフラのサービスを安定的に供給するために、基幹インフラの重要設備が外部からのサイバー攻撃の被害などに遭わないよう、導入や維持管理などの委託を事前に審査するという内容だ。

経済安全保障推進法の概要
経済安全保障推進法の概要
(出所:内閣官房資料を基に日経クロステック作成)
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 この内容を受けて、金融機関のシステム関連や個人情報を扱う業務について、中国からの撤退や日本国内への移管を検討する動きが広がっている。検討する対象は金融機関の子会社のケースもあれば、SI(システムインテグレーター)の中国での再委託先のケースもある。「実際に撤退するのはかなり大変なので、現時点では検討段階の企業が多い」(山本パートナー)。

 経済安保推進法の基幹インフラの安全確保に関する部分の施行は公布後1年6カ月~1年9カ月以内。そのため、先々に大きなシステム開発や更改といったプロジェクトを抱える金融機関から経済安保対応について問い合わせを受けるケースが多いという。