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 「現在、世界で開発が進められている空飛ぶクルマ、つまり電動垂直離着陸機(eVTOL)は飛行時間が実質、最大で20~30分しかないと見ている。動力源が電池だけでは当面、ユースケースが限られる。そこで我々は、eVTOLのニーズが高い片道100kmの航続距離を確実にカバーできる機体を開発する」

 2022年6月21~23日に開催されている展示会「Japan Drone 2022」に、空飛ぶクルマの機体を開発する新興の国産メーカーが初登場した。2021年12月に設立されたHIEN Aero Technologiesである。

 冒頭のコメントは、同社の代表取締役で、法政大学理工学部機械工学科教授の御法川学氏のものである。同氏は2008年に大学でパイロット養成コースを立ち上げて以来、新しいカテゴリーの小型航空機や安全設計に関する研究を行ってきた。さらに経済産業省と国土交通省による「空の移動革命に向けた官民協議会」のメンバーなどを務めるなど、空飛ぶクルマの分野で先導的な立場にある。

 同氏は空飛ぶクルマの開発が世界的に活発化するなか、国内に機体を開発するメーカーが少ないことに危機感を覚え、自ら会社を立ち上げた。電池製造やデジタル技術、流体計測の第一人者を技術顧問に迎え入れ、機体ビジネスに乗り出す。

 HIEN Aero Technologiesが開発する機体の最大の特徴は、ガスタービンで発電してプロペラのモーターを動かすハイブリッドシステムを採用する点にある。「数百kmの航続距離を実現するには、現時点ではガスタービンが実用的なためだ」(御法川氏)。燃料に灯油を使うガスタービン自体は欧州メーカー製を使うが、同社の開発の肝は、飛行時に必要な電力をリアルタイムに解析してガスタービンで発電する電力を制御するソフトウエア技術にあるという。1回の燃料補給で片道100km以上、確実に30分以上飛べる飛行時間を確保する計画だ。

ドローンや空飛ぶクルマに搭載するガスタービン
ドローンや空飛ぶクルマに搭載するガスタービン
燃料は基本的に灯油を使う。出力は10kW(写真:日経クロステック)
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 機体は自社で設計・開発する。まず、2022年内にハイブリッドシステムを搭載した大型のドローン「HIEN Dr-One」の開発を完了させる。ペイロードは25kg。出力10kWのガスタービンを2基搭載する。最大速度は150km/h以上で、航続距離は150km以上を実現する。2023年4月にインフラ点検や危険区域の監視、貨物輸送用途などに向けて受注を開始する。

「HIEN Dr-One」のモックアップ
「HIEN Dr-One」のモックアップ
ガスタービンを2基搭載、最大速度は150km/h以上、航続距離150km以上を実現する(写真:日経クロステック)
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