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 (1)としてまず、無軌道/軌道走行が自在に制御できる機能「ハイブリッド制御」を搭載。動作の安全性や台車などとの連携精度を高めた(動画)。

動画 軌道・無軌道を切り替えながら最大500kg牽引(音声あり)
(動画;日経クロステック)

 AMRは基本的に無軌道走行で、LiDAR(3次元レーザーレーダー)などのセンシング機器を使って周囲環境を認識しながら自律移動する。同社の開発品は無軌道走行に加えて、狭い通路などではAGV(無人搬送車)のようなガイドに沿った軌道走行と切り替えながら安全に運用できる。さらに、例えばベルトコンベヤーから荷物を受け取る際には、軌道走行であれば再現性が高いため効率良く連携できるというわけだ。

 (2)である「交通ルール」の設定は、工場などのそれぞれの地点に、AMRが従うべきルールを取り決められるというもの。例えば、信号のように時間に応じて移動を制限したり、「追い抜く時は右側を通る」というような規則を作ったりできる。

 これまでの製品の場合、ロボットの走行経路を綿密に練って運用することが多かったという。そこで課題になっていたのが、物流倉庫などで荷物が大量に来たら、すぐに運用が難しくなってしまうという事態である。同社製品は「交通ルールに従いつつも、突発的な事象についてはAMRが周囲の状況を見ながら順応できる。元々自動運転の開発をしていた知見などを生かして開発した」(阿蘓氏)(図5)。

図5 LexxPluss 代表取締役の阿蘓将也氏
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図5 LexxPluss 代表取締役の阿蘓将也氏
英マンチェスター大学大学院を卒業後、ドイツBosch(ボッシュ)で自動運転技術の開発に携わる。2020年3月にLexxPlussを創業(写真:加藤 康)

 さらに(3)である運用管理は、「50台くらいを同時に管理できる。ネットワークに負担のかからない設計をした」(同氏)とする。

先行者利益で市場獲れるか

 LexxPlussは現状で10社の協業パートナーを、2022年に30社まで増やす目標を立てる。強固なエコシステムを形成するため、「協業パートナーは絞っている」(阿蘓氏)。同社が協業パートナーとしたいのが、AMRのメンテナンス企業やロボット製造業者、ロボット制御システムを手がけるIT企業などである。

 AMRの国内製造台数は、「2022年に60台の生産が決まった。2023年に100台、2024年に300台を生産する目標だ」(同氏)と明かす。海外展開としては、2023年に米国などでの現地法人や協業パートナーを開拓し、2027年までに国内外を含めて1000台以上の生産を目指すという。

 その先のビジョンとして、協業パートナー以外の一般ユーザーに、ハードウエアの設計図を全面的に公開する計画もある。その条件については、「日本でAMR市場での認知度が取れていて、ほぼ独占状態になった時だ。例えば、協業パートナーが50社で、関連の主要会社が大体入っているような段階を想定する」(阿蘓氏)と語る。

 他方で、LexxPlussが先行者利益を得られる期間はそう長くはないだろう。海外においてもオープンなAMRのプラットフォームを提供する動きが加速しているからである。

 例えば、米Qualcomm(クアルコム)は2022年5月、同社のロボティクス向け半導体を活用したAMRの参照モデル(ハードウエア)を提供すると発表した。米NVIDIA(エヌビディア)も、AMRの開発に活用できる自律ロボット向けAI(人工知能)プラットフォーム「Jetson」を提供済みである。今後、こうしたハードウエアを活用し、LexxPluss同様にソフトウエアおよびクラウドサービスで収益を上げようとする企業が続々と登場する可能性がある。

 今後AMRの普及が進んでいくことを考えれば、「オープン化の流れは止められない」(阿蘓氏)。このような状況で、「日本のオープンなAMRならLexxPluss」(同氏)という流れをつくり出したい考えだ。

 LexxPlussが後発の他社に追い越されないためには、工場内の物流を手掛けるインテグレーターやユーザー企業をどれだけ早く取り込み、利用者コミュニティーを拡大できるかにかかっている。

■変更履歴

記事掲載当初、1ページ目13段落目に「デンソーウェーブとは、AMRに搭載できる自動車製造工場向けの協働ロボットアームを開発している」と記載していましたが、取材先からの申し入れにより「協働ロボットアームの開発を検討している」と変更しました。本文は変更済みです。[2022/6/28 10:30]

記事掲載当初、1ページ目12段落目のデンソーウェーブに関する文章でパートナー契約済みのように読める箇所がありましたが、取材先からの申し入れにより「契約に向けて協議中である」という注釈を追加しました。本文には追記済みです。[2022/6/30 17:30]