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 デジタル庁は2022年夏をめどに、政府がシステム調達の選考基準として用いるクラウドの利用方針を4年ぶりに改定する。2022年6月29日までに日経クロステックの取材で分かった。

 新しい方針では政府全体に対して、「クラウドをスマートに利用できる」点を、システム設計やサービス選定の際に検討するよう求める。国産ベンダーにとって政府調達で選ばれるためのハードルが上がり、政府システムに参加するベンダーの多様性が狭まる懸念もある。

「スマート利用」としてIaCやマネージドサービスを推奨

 デジタル庁が今夏に改定するのは、同庁発足前の2018年に策定された「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」だ。同方針には、政府として初めてシステム調達でクラウドの採用を優先すべきだと定めた「クラウド・バイ・デフォルト原則」が盛り込まれている。

クラウド・バイ・デフォルト原則に基づき、官公庁がクラウドサービスを選定する際の優先順位
クラウド・バイ・デフォルト原則に基づき、官公庁がクラウドサービスを選定する際の優先順位
プライベートクラウドよりもパブリッククラウドを優先する。利用できるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)があるかを検討してから、ない場合にIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)/PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の検討に移る(出所:内閣官房)
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 同原則により、総務省が2019年に政府クラウド基盤の「第2期政府共通プラットフォーム」の構築で米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)のクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」の採用方針を固めるなど、同方針は政府のクラウド調達における転機となっている。

 デジタル庁は初となる今回の改定で、政府機関に対して「クラウド優先」だけでなく、新たにクラウドを「スマートに利用できる」点も求める規定を盛り込む考えだ。同庁が想定するスマート利用の一例が、運用手順をプログラムコードとして記述することで運用自動化につなげる「IaC(インフラストラクチャー・アズ・コード)」の利用である。

 IaCは実際にデジタル庁で実績がある。AWS上に構築し2021年春に本稼働させた「ワクチン接種記録システム(VRS)」は、政府システムとしては初めて本格的にIaCを用いた事例となったという。ワクチン接種者の増減に合わせて仮想サーバーの台数を増減させるなど、「自動的かつ安定したインフラ運用に貢献した」(デジタル庁の担当職員)。

 デジタル庁は「スマート利用」に向け、クラウド事業者が提供する各種の付加機能「マネージドサービス」の利用も強く勧める。マネージドサービスとは、広くサーバーなどの運用代行サービスを指すケースが多いが、クラウドサービスの分野ではユーザーがシステム開発や運用ですぐに使える各種機能も指す。内容はベンダーにより様々だが、監視やデータベース、データ分析、AI(人工知能)など幅広い。

 デジタル庁はデータ分析やAIといった付加機能も政府調達にとって不可欠なマネージドサービスだと位置づけている。米国の大手メガクラウドベンダーが実装を進める一方で、国産ベンダーが差を付けられている分野でもある。