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 AI(人工知能)開発スタートアップのAI insideは2022年6月29日、実践型のAI人材育成プログラムなど3つの新サービスを開始すると発表した。同社は2021年4月、NTT西日本との大口契約が更新されず売上高の最大4割が減少すると発表したことは記憶に新しい。突如の売上高「蒸発」に株式市場は動揺し、市場関係者は「AI insideショック」と呼んだ。あれから1年強。渡久地択社長CEO(最高経営責任者)兼CPO(最高プロダクト責任者)を単独取材し、次の一手を聞いた。(聞き手は島津 翔=日経クロステック)

渡久地 択(とぐち・たく) AI inside代表取締役社長CEO兼CPO
渡久地 択(とぐち・たく) AI inside代表取締役社長CEO兼CPO
2004年よりAIの研究開発を始め、2015年にAI insideを創業。代表取締役社長CEOとしてサービス開発と技術・経営戦略を指揮し、多数の技術特許を発明。2022年2月に同社CPO。現在はCEOとCPOを兼任し、事業成長をけん引する(写真:AI inside)
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まずはこの1年、どんな時間でしたか。

渡久地社長:この1年でどんなことを考えてきたかというと、それまでとほとんど変わっていません。

 常に自分たちは「グローバルナンバーワン」を目指したい。そのためには、我々1社では事を成せない。だからこそ我々にとってパートナー戦略が非常に重要である、と。NTT西日本との不更新の問題がありましたが、我々の戦略は変わっていません。今後もパートナーを重視して事業を進めていきます。それが1つですね。

 もう1つは、非常に勉強になったということです。短期的な事象でしたが、学んだことは中長期的に生かせる。2022年3月期の数字を見ると、NTT西日本を除いたパートナー売上高は前期比で39.8%増と伸長しました。学んだことを消化できているのではないかと考えています。2022年3月期は減収という結果(編集部注:売上高はNTT西日本の大口契約がなくなったことで前期比28%減の減収)になりましたが、長期的な視点でやるべきことをやるだけだと考えています。

売上高の推移
売上高の推移
(資料:AI inside)
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NTT西日本との大口契約不更新とは

 AI insideとNTT西日本は2019年12月にパートナー契約を締結。AI insideの主力OCRサービス「DX Suite」のライトプランを、NTT西日本が「おまかせAI OCR」というサービス名称でユーザーに販売していた。NTT西日本はAI insideに対して2021年3月までに総額21億3700万円を支払った。

 しかし、多くのユーザーが、最低利用期間である12カ月を待たずに解約する結果となった。これを受けて、NTT西日本は2021年4月28日、AI insideに対してライセンス契約の一部を更新しないと通知。AI insideは、更新されないライセンスがさらに増加する恐れを勘案し、9284件全てが不更新と仮定した場合、2022年3月期には17億6300万円の売り上げが減少するとの見込みを開示した。2021年3月期の総売上高の約38%に当たる額だった。

具体的に「学んだこと」とは何でしょうか。

渡久地社長:1つは以前も説明した通り1社に依存するような体質の改善です。これは経営のセオリーでもありますが、偏りのない比率でパートナーシップを進めています。2022年3月期では、売上高ベースで当社による直販が46%、外部のパートナーによるものが54%。バランスの取れた経営ができています。

 もう1つはオンボーディング(サービスに新たに加入した人を支援し定着を促す施策)の重要性です。

 ちょうど2022年4~6月期でNTT西日本の件の影響が出尽くします。このタイミングでもう一度気分を入れ替えて、投資家の皆さんからも当社を評価していただきたいと思っています。

今のNTT西日本の解約率は?

改めて確認させてください。NTT西日本によるOEM(相手先ブランドによる生産)商品の解約率が極めて高かった理由をどう分析していますか。