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2つのゲートでスイッチング動作を調整

 IGBT製品における損失は全部で5つある(図4)。IGBT動作での損失が3つ、すなわち①導通損失、②ターンオフ時のスイッチング損失Eoff、③ターンオン時のスイッチング損失Eon。ダイオード動作での損失が2つ、すなわち、④導通損失、⑤逆回復時のスイッチング損失Errである。シングルゲート制御に比べてダブルゲート制御では、③IGBT動作のターンオン損失が18%減少、⑤ダイオード動作の逆回復損失が32%、②IGBT動作のターンオフ損失が24%減少したことを確認した(図5)。なお、全体では24%の損失削減という。このように、③や⑤、②のスイッチング損失を低減しながら、①IGBT動作の導通損失や④ダイオード動作の導通損失は増えない。

図4 5つの損失
図4 5つの損失
(出所:東芝デバイス&ストレージ)
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図5 トータルで24%の損失低減を確認
図5 トータルで24%の損失低減を確認
(出所:東芝デバイス&ストレージ)
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 上述のようにスイッチング損失が低減するのは、2つのゲート(メインゲートMGとコントロールゲートCG)を使ってスイッチング動作を調整しているためである(図6)。具体的には、IGBT動作のターンオフ時には、MGよりもCGを先にオフすることで、基板に蓄積されていたホールを減らす。これで③IGBT動作のターンオン損失が減少する。また、ダイオード動作の逆回復時には、逆回復の直前にMGとCGを同時にオンすることで、基板中に蓄積されていた電子を放出させて、⑤ダイオード動作の逆回復損失を低減する。なお、⑤ダイオード動作の逆回復損失を低減することの副次的な効果として、②IGBT動作のターンオフ損失が減少するという。国際学会の発表では、今回の試作品と、既存製品のスイッチング波形の違いを見せた(図7)。

図6 2つのゲートでスイッチング動作を調整
図6 2つのゲートでスイッチング動作を調整
左はIGBT動作のターンオフ時の様子。右はダイオード動作の逆回復時の様子(出所:東芝デバイス&ストレージ)
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図7 スイッチング動作の波形を実測・比較
図7 スイッチング動作の波形を実測・比較
左はIGBT動作のターンオフ時。右はダイオード動作の逆回復時(出所:東芝デバイス&ストレージ)
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