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 不正という膿(うみ)を出し切れずに調査は終了した。不正体質を温存したまま業務用エアコンを造り続ける三菱電機冷熱システム製作所(和歌山市)は、その表面を「骨太の方針」と呼ぶ風土改革やコンプライアンス(法令順守)教育などで取り繕っても、問題の撲滅にはつながらない。

三菱電機が調査報告書(第3報)で業務用エアコン室内機の騒音を再測定して報告
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三菱電機が調査報告書(第3報)で業務用エアコン室内機の騒音を再測定して報告
カタログには騒音の最大値を「45dB」と記載して販売していたが、当時の設計図に基づいて実機(VMMコピー機)を造って測定し直すと最大値は「41.2dB」になったと三菱電機は回答した。ところが、ここからさまざまな技術的な矛盾が見えてくる。左下はファン(シロッコファン)のイメージ。(イラスト:穐山 里実)

 同製作所が不正体質を改善できなかった責任は、不正を見抜けずに容認する形となった、品質改革推進本部にも外部調査委員会(以下、調査委員会)にもある。

 繰り返し強調しておきたいのは、技術的な検証力が不十分では、製造業の品質不正の真因(問題を引き起こした本当の原因)を追究することはできないという点だ。三菱電機の漆間啓社長は「膿を出し切る」と再々繰り返すものの、本気でそう望んでいるのであれば、不正の隠蔽に関与した幹部社員の責任追及はもちろん、それらを見逃したかのような内容で調査を終了し、「お墨付き」を与える格好となった品質改革推進本部と外部調査委員会の責任も問うべきではないか。

 率直に言って、同本部と調査委員会には技術的な検証力が決定的に欠けていると言わざるを得ない。

 三菱電機は2022年5月25日に公表した「調査報告書(第3報)」(以下、報告書第3報)の中で、冷熱システム製作所に対してはこの「報告書をもって、当委員会による調査は終了」すると木目田裕委員長は宣言した。

 結論から言えば、三菱電機による今回の主張も、前回と同様に技術的合理性に欠ける内容だ。古い設計である室内機「VMM」シリーズの性能が、高く評価された新設計を施した後継機種を超えるという技術的な矛盾を露呈してしまっている。

9年前の「凡庸な設計」の方が低騒音?

 三菱電機の主張はこうだ。当時の設計図に基づいて冷房能力が16.0kWの実機(以下、VMMコピー機)を製作し、外部の騒音測定会社に騒音値を測定させた。その結果、騒音値は「35.7~41.2dB」〔品質改革推進本部を主導してきた竹野祥瑞氏(現在は生産システム本部長)〕だった。よって、VMMコピー機はカタログ値である「42~45dB」を超えておらず、「騒音値を改ざんして騒音値を低く見せていたといったことは確認されなかった」(報告書3報)──。

VMMコピー機による騒音の再測定値
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VMMコピー機による騒音の再測定値
「35.7~41.2dB」となったと、三菱電機は報告書第3報を公表した会見で記者の質問に応じる形で回答した。ところが、この騒音の最大値はカタログ値から約4dBも離れているどころか、その9年後に発売した、流体力学を駆使した当時最新の設計で開発された後継機種(VMA)の騒音の最大値(42dB)よりも良くなってしまっている。(出所:日経クロステック)

 この主張における最大の技術的な矛盾は、旧型機種(VMMコピー機)の静音(低騒音)性能が、その後継であり、空調業界で「画期的な製品」と評された当時の新型機種「VMA」シリーズを超えていることである。

 ここで注目すべきは「騒音の最大値」だ。顧客の多くが、この値を見て業務用エアコンの室内機の静かさを判断するからである。VMAの騒音の最大値が「42dB」であるのに対し、VMMコピー機のそれは「41.2dB」と小さな数値となっている。VMAよりも古い設計であるVMMコピー機の方が、約1dBも低騒音性能が優れているとは一体どういうことか。業務用エアコンにおいて1dBの騒音の差は大きい。1dB分の削減は、一人前の開発設計者が丸1年間を費やしても実現できるかどうかといっても大げさではないほど難しい仕事とされているからだ。

 かねて業務用エアコンでは、競合企業同士が省エネ競争と低騒音競争で激しいつばぜり合いを繰り広げている。三菱電機がVMMを発売したのは2000年。VMAは2009年だ。仮にVMMコピー機の騒音の最大値が三菱電機の言う通り41.2dBだとしたら、同社の開発設計者は9年も費やしておきながら、旧型機種よりも劣った低騒音設計に改悪したことになる。

 従って、これは事実に反するとしか考えようがない。