オーストラリア証券取引所、香港証券取引所、米ゴールドマン・サックスなど海外で多くの大手金融企業にブロックチェーン技術を提供する米Digital Asset Holdingsが日本に進出する。2022年内に、SBIホールディングス(HD)と合弁会社を設立して日本および東アジア地域で事業を展開する。SBIHD海外事業管理部次長の田中雅冬氏は、「日本で事業を展開する際に、単独では金融機関との連携が難しい。市場に影響力があり、インフラを自ら作っていけるパートナーとして当社を選んだ」と説明する。Digital Assetは、海外でSBIHDが出資する米R3と協業した実績を持つ。
Digital Assetの中核技術は、スマートコントラクト言語「Daml」。Damlを利用して、さまざまなブロックチェーン基盤やデータベースに対応したアプリケーションを開発できる。スマートコントラクトとして処理を自動化し、複数のブロックチェーン基盤をまたがるトランザクションも実行可能だ。
合弁会社では、海外で開発実績がある各種アプリケーションから日本で展開していく。「特に証券取引所のシステムや保険関連、排出量取引のシステムをターゲットとする見込み」(田中氏)。例えば香港証券取引所は、中国本土との間で実施する人民元建て上場株式取引である「ストックコネクト」において、取引後決済プラットフォーム「HKEXSynapse」でDamlを利用。取引後のワークフローを自動化して高速処理を実現しているという。
銀行の法人顧客向けサービスに
合弁会社は日本で手掛ける新たなサービスとして、「スマート円(仮称)」を計画している。スマート円は、銀行が法人顧客に提供するサービスを構築するためのプラットフォーム。銀行は、小売りなどの店舗を持つ法人顧客が同銀行に口座を持つ消費者に対して、商品の購入時などに割引やクーポン券の発行を実施するといった顧客ロイヤルティープログラムの仕組みを提供できる。