政府の「デジタル市場競争会議」が2022年4月26日に公表した「モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告」が波紋を広げている。とりわけ注目されるのは、米Apple(アップル)や米Google(グーグル)が「サイドローディング」を禁止または抑制していることの弊害を列挙し、対応策の1つとしてサイドローディングを許容する義務を挙げたことだ。
サイドローディングとは正規のアプリストア以外からのアプリ配信のことだ。正規のアプリストア以外から配信されるアプリは「野良アプリ」とも言われる。一般社団法人「日本スマートフォンセキュリティ協会」の技術部会は2022年7月1日、「スマートフォン・サイバー攻撃対策ガイド『サイドローディングの危険性』」というタイトルの文書を同協会のWebサイトで公開した。ここでは「サイドローディングを認める場合、いかなるアプリも無審査で配信することが可能となり、利用者の安全性を担保することは極めて難しくなる。また、有料アプリの海賊版が出回ることも予想され、開発者のイノベーションを削ぐ(そぐ)ことにもつながるだろう」と懸念を表明した。
iPhoneなどアップル製の端末であれば「App Store」、グーグルの基本ソフト(OS)Androidを搭載した端末であれば「Google Play」が正規のアプリストアである。ここでアプリを配信するには審査を通過しなくてはならない。iPhoneではサイドローディングが一切認められていない。Android端末の場合、初期設定でサイドローディングは無効にされている。ユーザーが設定を変更すれば有効にできるが、警告や通知が端末に表示される。
中間報告で表明されているのは、アップルとグーグルがOSに加えてアプリストアを独占することにより、ユーザーやサービス事業者を含むスマホの上に形成されたエコシステムにおける競争環境を阻害しているのではないかという懸念だ。
現状、ユーザーがApp Storeで有料アプリを購入すると、購入価格の15~30%がアップルに支払われる。同中間報告はiPhoneのアプリ配信市場をアップルが独占し競争圧⼒が働いていないと指摘。デベロッパーがアプリを販売するためにアップル側に支払う⼿数料が高止まりしているなどの懸念を示した。競争を生み出す選択肢の1つが「サイドローディングを許容する義務」というわけだ。
サイドローディング可能なAndroid端末についても、警告の表示方法や内容がユーザーにリスクを過大評価させている恐れがあるとし、結果的にGoogle Playが専ら利用されていると指摘する。従って「サイドローディングによるアプリの配信を制限することを禁止する規律を導入することが考えられるのではないか」としている。