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 AI(人工知能)創薬スタートアップのElixが開発したAI創薬ツールの「Elix Discovery」を、中堅製薬企業の科研製薬が採用した。Elix Discoveryは薬の候補となる化合物の活性などをAIが予測するツールだ。科研製薬は社内にAI専門家がいない中でも、同ツールを活用することでAI創薬に挑む考えだ。

 Elixは2022年6月16日にElix Discoveryを発表した。創薬プロセスのうち、薬の候補となる化合物を見つけ出す過程をAIによって高速化することを目指す。化合物の構造データを入力するとその化合物の活性や毒性などをAIが予測する「Elix Predict」と呼ぶ機能や、ある活性や毒性を満たす化合物の構造をAIが予測する「Elix Create」と呼ぶ機能などを備える。これらの機能はGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)から直感的に利用できる。

Elix Discoveryで化合物の活性を予測した例
Elix Discoveryで化合物の活性を予測した例
(出所:Elix)
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 実際にElix Discoveryを用いて創薬を進める際には、まず万単位の候補化合物をElix Createによって構造発生し、そのうち薬として効果が見込めそうなものを数個から数十個までElix Predictによって絞り込む。その後、絞り込んだ候補化合物の本当の活性を実験などによって検証する。

 人間が実験をして化合物を絞り込むにはコスト面や時間面での限界がある。候補の生成や絞り込みにAIを活用することによって「研究開発期間の短縮はもちろん、人間の力だけでは発見できなかったような新しい候補化合物を見つけ出せる可能性がある」。Elixの結城伸哉CEO(最高経営責任者)はそう意気込む。

活性を予測する機械学習モデルを組み込み済み

 これまでは製薬企業がAI創薬に挑むに当たっては、化合物の活性などを予測する機械学習モデルを、過去の実験データなどを使って自社で開発する必要があった。新薬開発の期間の長期化やコストの増加、開発成功率の低さなどを理由にAIによる創薬プロセスの改革を目指す企業は増えているものの、自社でAI技術者を抱えられない中堅製薬企業にとってAI創薬は難しかった。

 それに対してElix Discoveryには、化合物の活性予測や構造発生に必要な機械学習モデルについては、あらかじめElixが作成したものが搭載されている。また新しい機械学習モデルを作成する際もElixのエンジニアが作業を支援する。教師データを作成するための実験を効率化する「Elix Assist」と呼ぶ機能も備える。Elix Assistは次に実験すべき化合物をアルゴリズムが提案することで、必要となる実験回数をより少なくできる機能だ。

 Elixの結城CEOは「既存のAI創薬支援サービスでは、学習データの種類や量、前処理の仕方やモデルの選択などが分からず、ツールを導入しても現場の研究員が使いこなせない例も多かった」と指摘する。ツールだけでなく導入支援サービスや機械学習モデルの作成サービスも提供することで、活用しやすくする狙いだ。