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 メタバース(仮想空間)を研修や採用など人事関連の活動に活用する企業が増えている。

 PwCあらた監査法人は2022年6月、VR(仮想現実)空間で新入社員向けデジタル研修を実施した。HMD(ヘッドマウントディスプレー)を着用し、上司や先輩社員にどのようにホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)をしながら資料作成を進めるべきかなど、業務の進め方をVR空間で体感しながら学ぶ。

PwCあらた監査法人はVR空間で新入社員向け研修を実施した
PwCあらた監査法人はVR空間で新入社員向け研修を実施した
(出所:PwCあらた監査法人)
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 VRを使うメリットは臨場感だ。質問したいことがあるが、先輩社員の仕事の邪魔にならないタイミングをうかがっているうちに、時間だけが過ぎていく。あるいは、質問しようにも何が分からないのかが分からない。そんな新入社員の心境がリアルに迫ってくる。

 上司や先輩社員は新入社員が何も言わないと「問題ないのだろう」と思いがちだ。VR研修では「疑問点があれば抱え込まずに早めに相談してほしい」と思っている上司や先輩社員側の視点に立つこともできる。

 「新入社員の心境を客観的に見られただけでなく、上司から新入社員がどう見えるかもリアルに感じられた。口頭で言われたりビデオ映像を見たりするよりもインパクトがあり強く印象に残っている」と、2022年6月にVR新人研修を受講した同監査法人アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部の松田優真氏は話す。

きっかけは「研修がつまらない」という若手社員の言葉

 主に入社3年目までの社員を対象に、不正会計に対する理解を深める研修もある。不正会計が行われているのに監査で見抜けないという内容で、被監査会社の経理担当者と監査人双方の視点で現場の様子を体感できる。「不正会計を見破るのは監査人の重要な仕事の1つだが、実際の監査現場ではすぐには経験できない。VR空間で疑似体験しておく意味は大きい」と同監査法人の久保田正崇執行役副代表は言う。

 VRを人材教育に本格導入したきっかけは、新型コロナウイルス禍以前に若手社員に言われた「研修がつまらない」という一言だった。2020年6月にPwC米国法人でVRを使った研修効果が高いという調査結果が得られたことも踏まえた。不正会計のVR研修内容はすべて若手社員が考案した。