「これほどの業績悪化はここしばらく記憶にない」(三菱電機の関係者、以下関係者)──。三菱電機においてFAシステム事業と並ぶ「稼ぎ頭」であるはずの空調・家電事業の業績に急ブレーキがかかった。2022年度第1四半期の営業利益が前年同期に対して約7割も減少(図1)。営業利益が310億円も目減りし、同社全体の足を引っ張った。前年同期は営業利益率が12%を超える高収益を誇っていた事業が一転、2.7%の低収益となった。
今四半期は1米ドルが110円から131円になるなど為替が円安に振れ、売上高は3%減とほぼ横ばいを維持。にもかかわらず、営業利益が大幅に悪化した理由を、三菱電機は「素材価格・物流費の上昇や操業度の低下など」(同社)と説明した(図2)。素材価格では「特に鋼と樹脂が高騰」(同社)しており、物流費の上昇と操業度の低下については「中国・上海のロックダウン(都市封鎖)の影響」(同社)が大きかったという。
だが、三菱電機のこの説明に、関係者は「果たして営業利益がここまで大きく落ち込むものだろうか」と首をひねる。上海のロックダウンの影響を受けても、上海の工場が稼働を停止した分は、タイ工場で増産すれば十分補えるという。このロックダウンによる物流の混乱で物流費が上がり、さらに素材価格の高騰分を織り込んでも、310億円もの減益要因にならないとみるのだ。
最大の減益要因は「販売台数の低下」か
関係者によれば、最大の減益要因として考えられるのは、販売台数の低下である。先の通り、為替が2割強(135円/110円)の円安に転じても、売上高がほぼ変わらないということは、販売台数が2割減ったとみることができる。ところが、開発費や人件費、工場管理費といった固定費は変わらない。そのため、営業利益は「3~4割ほど減ってもおかしくない」(関係者)。
この販売台数の低下に続く減益要因が、物流費の上昇だ。意外にも、素材価格の高騰は「それほど大きな減益要因にはならない」と関係者は指摘する。その根拠は空調機の利益の構造にある。
関係者の話から家庭用エアコンを例に、その利益の構造を見てみよう。