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世界シェア40%も消失の恐れ

 自動車エンジン向けタイミングチェーンで40%近い世界シェアを握る椿本チエインも、攻めどころを探る会社の1つ。タイミングチェーンはエンジンのクランクシャフトとカムシャフトの回転を同期させる部品で、需要の増減はエンジン搭載車の市場規模に左右される。

 同社がチェーン技術の応用先として期待を寄せるのが、EV向け電動アクスル(eアクスル)である。駆動用モーターやインバーター、減速機などを一体化した電動アクスルのなかで、減速機に目を付けた。ギアを使う従来の減速機構を、チェーンとスプロケットに置き換えることを提案する。

電動アクスルの減速機に向けたチェーン
電動アクスルの減速機に向けたチェーン
椿本チエインが提案する。四輪駆動(4WD)車のトランスファーに使うチェーンをベースに開発した。(写真:日経Automotive)
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 チェーンを使うことで、「ギアのシステムに比べて伝達効率を0.5~1%向上でき、発生する音も抑えられる」(同社の開発担当者)という。さらに、「軸受に安価なベアリングを使用できる」(同担当者)点も訴求する。

 平行軸歯車を使う減速機では、ギアの部分に大きなスラスト荷重(軸方向に作用する荷重)がかかる。これに対応するため、量産EVの減速機には円すいころ軸受(テーパーローラーベアリング)のような高価なベアリングを採用することが多い。一方、椿本チエインの開発品は「スラスト荷重がかからない」(同担当者)ため、安価なベアリングで済むという。

 システム全体で考えればチェーンを使う分、開発品の方が高コストになる可能性もある。それでもチェーン自体は、四輪駆動(4WD)車のエンジン出力を前輪と後輪に分配するトランスファー向けのものを応用できた。チェーンの幅やピッチは減速機向けに改良し、モーターの高速回転に対応できるようにした。

トヨタも一目置く表面処理技術

 エンジン用のすべり軸受が主力製品の大豊工業は、燃料電池車(FCV)向けセパレーターを開発中で、2026年以降の量産化を目指している。「金属板のプレス成形からレーザー溶接、表面のコーティング処理、セパレーター間のシーリングまで、当社の保有技術で一貫して対応できる」(同社の担当者)のが特徴だ。

大豊工業が開発したFCV向けのセパレーター
大豊工業が開発したFCV向けのセパレーター
燃料電池セルに使うもの。FCV1台当たり、数百枚使う。(写真:日経Automotive)
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 大豊工業の表面処理技術はトヨタも一目置く。同社の大型SUV(多目的スポーツ車)「ランドクルーザー」に搭載するディーゼルエンジンに、大豊工業の技術を採用した。ディーゼルエンジンは筒内圧力が高く、すべり軸受の耐久性の確保が難しい。

 トヨタはこれまで鉛(Pb)を添加あるいは表面被膜することで対応してきたが、新型ランドクルーザーのディーゼルエンジンは「Pbフリー」を目指した。耐疲労性や耐酸化性を高めるにはビスマス(Bi)を表面被膜することが有効とされてきたが、「機械強度が低く、疲労損失が発生するという課題があった」(大豊工業の担当者)。大豊工業は、Biにアンチモン(Sb)を混ぜた合金を被膜に使うことで十分な耐久性を確保できるようにした。

 開発を進めるFCV用セパレーターにBi-Sb合金を使うわけではないが、表面処理の技術や材料開発のノウハウが生きる。開発品は耐食性を高めるために、ステンレス板の表面にチタン(Ti)やDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)をコーティングする予定である。