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 結果として「PLC(Programmable Logic Controller)だけでは実現できない、フィットネスマシンとして必要な複雑な動きを実現できた」と、巳野氏は胸を張る。

 プロジェクトが進むにつれて、プロダクトデザイナー、弁護士・弁護士、電装設計者、機械設計者など、さまざまな分野の専門家たちも開発メンバーとして集まった。この多彩なメンバーが、投資家たちの評価を得るのにもつながったと巳野氏はみている。同時に、巳野氏や福原氏も、パートナーとともに開発に取り組みながら、設計・製造に関する知識や、機械制御の知識を深めたという。

スタートアップも工場も低リスクに

 スタートアップとものづくり企業の仲を取り持つに当たって小川氏が意識しているのは、「現実的なコスト視点が著しく欠落している相談は受けないようにして、実際に製造を手掛ける工場に無理をさせないこと」という。

 実は「10万円で試作機を造ってください」「100円ショップで売っているようなものなので、それと同じくらいの価格で」といったビジネス視点の欠落した、消費者目線のコスト感覚の相談が多かったからだ。

 その点、「巳野さんにはただならぬ熱意が感じられ、考えが明快で分かりやすかった。グーグルでサービス開発に関わった経験があったからか、ビジネスやものづくりのコスト感覚がしっかりしていて安心して話ができた」。小川氏は巳野氏と初めて会話した時の印象をこう振り返る。

 実はTOKYO町工場HUBを立ち上げた古川氏自身も、銀行やベンチャーファンドでキャリアを積んではきたものの、ものづくりについては素人だった。だからこそTOKYO町工場HUBの設立当初から、ものづくりのベテランである小川氏と話し合いを繰り返し、スタートアップと工場の双方が、より少ないリスクで成果を出せる方法論を丹念に検討してきた。ONE SLASH ONEはその成果の表れの1つというわけだ。