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 原材料費の高騰と半導体不足、物流費の高騰、そして中国・上海のロックダウン(都市封鎖)。これら「四重苦」を吸収し、ダイキン工業の2023年3月期(2022年度)第1四半期は好決算となった。売上高は21%伸ばして9678億円と、四半期ベースで1兆円に迫る勢いを見せている(図1)。営業利益は前年同期をほぼ維持(1%減)した。

売り上げが好調なダイキン工業
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売り上げが好調なダイキン工業
2022年度第1四半期の売上高が前年同期比で21%伸びた。営業利益は昨年と同水準を維持した。(出所:ダイキン工業の資料を基に日経クロステックが作成)

 通期の業績予想も上方修正。前年度に比べて売上高予想を12%増(+1000億円)の3兆4800億円に、営業利益予想を11%増(+100億円)の3500億円に引き上げた。競合他社が業績の変調に苦しむ中、空調業界でダイキン工業は「独り勝ち」の様相を強めつつある。

 競合他社と同様に、四重苦は今四半期にダイキン工業に重くのしかかった。営業利益の増減要因を見ると、為替が円安(1米ドル:110円→130円、1ユーロ:132円→138円)に振れた点は80億円の増益要因になった(図2)。一方で、物流費を含む原材料の高騰(515億円)と上海ロックダウン(180億円)、さらに固定費など(144億円)の減益要因が重なって、合計で839億円分の営業利益押し下げ効果となった。

営業利益の増減要因
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営業利益の増減要因
物流費を含む原材料の高騰が515億円の減益要因となったが、売価(値上げ)で450億円分まで押し戻している。他にも上海ロックダウンの減益要因は拡販の増益要因でカバーするなど、全体的に四重苦を吸収する内容となっている。(出所:ダイキン工業の資料を基に日経クロステックが作成)

 これらに対してダイキン工業は、まずコスダウンに努めて105億円分を吸収。加えて、省エネ性能と高品質、そしてサービスの充実などを打ち出し、米国と東南アジア、欧州を中心に拡販して190億円分を取り返した。だが、最も大きな挽回策は、売価のアップ(値上げ)である。この値上げにより、同社は450億円分の営業利益の押し上げ効果を得ている。

旧ヤマダ電機と決別

 ダイキン工業は「値崩れを極端に嫌う会社として業界で知られている」(空調業界関係者)。事実、安値販売をしない方針を掲げており、かつて家電量販店最大手のヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)の値引き要請を断り、ヤマダ電機の店舗からダイキン工業製の家庭用エアコンが消えた話は有名だ。ダイキン工業は2021年度も現在も、家庭用エアコンでパナソニックに競り勝ち、国内シェアでトップの座にある。

 業務用エアコンでも、国内シェアは40%程度でトップ。2021年度には半導体不足の中、「弾切れ」を防いで(製品供給を絶やさずに)シェアを数ポイント高めた。2位の三菱電機のシェアは20数%だから、ダイキン工業は競合他社をシェアで圧倒している状況だ。

 業務用エアコンの価格は「ダイキン工業を100とすると、三菱電機は90程度で、3位の(日立製作所傘下の)日立グローバルライフソリューションズは80程度。ダイキン工業が値下げして低価格競争を仕掛ければ、三菱電機や日立からもっとシェアを奪えるはずだが、そうしようとはしない」と空調業界関係者は語る。

 この点について、ダイキン工業社長兼最高経営責任者(CEO)の十河政則氏は、安値攻勢を仕掛けてシェアを高める方法を、「市場を壊す」として社内で禁じている。低価格競争になれば、次第に利益をいかに削るかの戦いとなり、限界まで利益を下げた価格でしか売れなくなる。そうなれば、十分な利益を得られず、次の製品のための技術開発費すら捻出できなくなって持続的成長が望めなくなるからだ。

 つまり、ダイキン工業にとって安売りに背を向けるのは既定路線。今の同社は、競合他社に比べて、値上げがうまいといえる。