インフルエンザの検査に使う、新しい医療機器が登場した。スタートアップのアイリス(東京・千代田)が開発した「nodoca(ノドカ)」だ。このたび、薬事承認を得た。専用カメラで撮影した咽頭の画像と問診データをAI(人工知能)で解析し、インフルエンザに特徴的な咽頭の様子や症状があるかを判定。その判定結果を医師は診断時に参考として使える。従来の検査と比べて患者への負担が小さく、待ち時間が短いという特徴がある(図1)。
nodocaによる検査では、医師が患者の咽頭画像を専用カメラで取得する。撮影は診察時に行えるため、患者は口を開けてしばらく待つだけだ。医師は鉛筆を持つように専用カメラを持ち、モニターに映った咽頭の様子を確認しながら側面のシャッターボタンを押すと、自動的に複数枚が連写され、取得した画像はクラウドに送られる。
咽頭画像の撮影とは別に、医師は体温や症状などに関する問診データをシステムに入力する。これらのデータがそろった段階でシステムに判定を指示すると、AIによる解析がスタートする。咽頭画像からはインフルエンザ患者に特徴的なリンパ濾胞(ろほう)などを検出し、最終的には問診データを含めて総合的に判定するという仕組みだ(図2)。
nodocaによる検査は、患者が感じる痛みや違和感を和らげ、待機時間を短くすると期待されている。従来のインフルエンザ検査では、鼻の奥の粘膜をこすって検体を採取し、イムノクロマト法で実施するケースが多い。検体採取時に患者には痛みや不快感があるほか、小児であれば泣いてしまい、検査に手間取ってしまうことがある。患者のくしゃみを誘発して飛沫がとび、医療従事者の感染につながるリスクもある。また、検査結果が得られるまで15分ほど待合室で待機してもらい、その後再び診察室で結果を聞くなど、診断がつくまでに時間がかかっていた。
専用カメラを口の中に入れて咽頭を撮影するnodocaでは、検体採取時のような痛みは発生しない。臨床研究に参加し、実際にnodocaを利用した医師からは「既存の検査と比較して小児を検査するときに泣かないのが利点」「検査時の患者への負担が少ない」といった声が寄せられたという。
AIによる解析は十数秒で済むため、診察中のわずかな時間で結果を得られるのも強みだ。検体採取の手間も不要で、発熱患者の診察で一般的に行われる咽頭の観察時に画像を取得できる。nodocaを使うと診察中に結果を確認できるので、待ち時間の減少につながる。
また、nodocaがインフルエンザ患者を正しく陽性と判定できる感度は70%以上で、陰性を正しく陰性と判定できる特異度は85%を超える。イムノクロマト法による検査の感度は、実際の臨床現場では60%程度と報告する論文が発表されている。