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 クルマの所有者なら、誰もがお世話になる自動車整備工場。機械的な整備を専門とするイメージが強いが、近年はIT化を迫られている。各種制度の電子化が進み、2023年1月には車検証の電子化が始まる。自動車自体も点検の電子化が進むなど大きな変革期を迎えているからだ。しかし町工場規模の企業が多く、ITの活用はあまり進んでいない。こうしたなかで、IT活用に積極的に取り組んでいるのがツカサ工業(長野県大町市)だ。ITの専門人材を確保して、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進めている。電子化を見据え、2年前の2020年7月にはICT(情報通信技術)事業部を設立してIT導入を「自前化」したほか、自社で培ったノウハウの外販も始めた。

長野県大町市にあるツカサ工業の本社
長野県大町市にあるツカサ工業の本社
(出所:ツカサ工業)
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 ツカサ工業は普通車のほか、トラックなどの大型車や大型建設機械などの特殊車両、特装車の点検や整備、車検業務を手掛ける。社員数が20人の地元に根差した整備工場だが、車検手続きなどのオンライン化の制度「自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)」に全国でいち早く対応するなど、業界ではIT活用のトップランナーとして知られている。

車検手続きのオンライン化に全国でいち早く対応した
車検手続きのオンライン化に全国でいち早く対応した
(出所:ツカサ工業)
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 OSSは2017年4月に始まった制度で、車検時の各種書類の提出や税、手数料の納付などをオンラインで一括して行える。つまり各種手続きのために役所に出向く必要がなくなる。ツカサ工業の佐藤憲司社長は「手続きの時間短縮や業務の効率化につながると考えたので、すぐに対応した」と話す。この制度をきっかけに、IT活用の強化を目指すようになったという。

ツカサ工業の佐藤憲司社長
ツカサ工業の佐藤憲司社長
(出所:ツカサ工業)
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 同社ではOSSに対応した当初、国土交通省などが用意するWebブラウザー型のソフトウエア(Webブラウザー型)を使っていた。Webブラウザー型では、2種類のソフトを使い分ける必要がある。一方のソフトはWindowsに標準搭載のMicrosoft Edgeで使えるが、もう一方はFirefoxしかサポートしていない。つまり、Firefoxをインストールしなければならない。しかも、Webブラウザーごとに電子証明書の設定なども必要だ。佐藤社長は「これからは業務が複雑になることが見えてきたので、もっとITを活用していこうと考えた」と話す。

 まず翌月の2017年5月から、ディーアイシージャパン(長野県上水内郡)が提供するクラウド型のOSS対応ソフトを導入した。ツカサ工業は以前から、同社の整備業務システムを使用していた。OSS対応ソフトはこのシステムのオプション機能なので、円滑に導入できたという。Webブラウザー型では1台ごとにデータを手入力していたが、クラウド型に移行したことでファイル送信による一括登録などが可能になった。ソフトやWebブラウザーの使い分けも不要になったので「車検業務をさらに効率化できた」(佐藤社長)。

 佐藤社長が、IT活用を進める上で不可欠と考えたのが専門人材の確保だ。新たなソフトやIT機器の導入を外部に委託すると、時間やコストがかかる。専門人材で導入を自前化すれば、ITの活用はさらに進むと考えた。そこで2020年7月、Webのエンジニアやデザイナー、プロデューサーとしてのスキルを持つ小林優太氏 を社員として迎え入れた。ツカサ工業のWebサイトや佐藤社長のブログの構築を依頼していた会社の担当者だった小林氏を「2~3年かけて口説き落とした」(佐藤社長)。小林氏の入社と同時に、ICT事業部も立ち上げた。