居酒屋「塚田農場」などを展開するエー・ピーホールディングス(APHD)がウィズコロナに向け、デジタルを活用した事業モデルの再構築を矢継ぎ早に進めている。主力の九州塚田農場業態における2021年12月の売上高が前年同月比で32%増加した一方、人件費を同2%増にとどめるという成果も得ている。その大きな原動力となっているのは、生産から自社で手掛ける地鶏などの料理の魅力が顧客に伝わるモバイルオーダーだ。
「いらっしゃいませ、こちらのQRコードを読み取ってご注文をお願いします」。塚田農場の店舗に入るとスタッフから紙のメニューの代わりに渡されるのが、QRコードの紙がクリップで留められた「モバイルオーダーご利用案内」のカードだ。
QRコードをスマートフォンで読み込むと、Webブラウザーに現れたのはスタッフの顔写真付きの「ようこそ」画面。メニュー画面に進むと、一般的なWebサイトと同様に縦方向のスクロールで「おすすめメニュー」などジャンルごとのメニューが並ぶ。各ジャンル内では横方向にスライド可能になっており、ここで料理を選択できる。看板商品のいくつかは、地鶏をあぶる調理中の様子や生卵がトロリと流れる様子などが動画で流れる。料理の詳細画面にはスタッフによるお薦めコメントのほか、その料理に合う飲み物や生産者のこだわりなども紹介されている。
商品を注文リストに入れ、確認画面を経て注文すると、注文完了画面に「さつまハイボール」の動画。メニュー画面の小さな枠内ではなく、画面いっぱいに大写しで流れるとついつい見入ってしまう。このほか、クレジットカード払いであればモバイルオーダー画面で会計を済ませて、そのまま店を出ることも可能だ。
顧客が注文を送信すると、システムを運営するトレタ(東京・品川)のサーバーを介して、キッチン内に据え付けられた小型プリンターから自動的に注文内容が印字される。厨房内のスタッフがそれを確認し、料理や飲み物を用意する。スタッフが持つスマホでは、各テーブルの注文状況や、時間制である飲み放題の経過時間といった詳細も確認可能だ。