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再生可能エネルギーの大量導入時代の到来で、世界ではその出力変動を平準化したり、需要を超えた余剰電力を貯蔵したりするための蓄電システムの技術革新が相次いでいる。その中で、シャープが新型の亜鉛空気電池システムの開発開始を発表した。材料が非常に安く、蓄電容量を増やせば増やすほど、蓄電コストが下がるという既存の蓄電システムにはない著しい特長を備える。

 シャープは2022年8月、「カーボンニュートラルの実現に向けた『亜鉛による蓄エネルギー技術』の開発を開始した」と発表した。電解液と電極の活物質が一体となった、いわゆるレドックスフロー電池(RFB)の一種といえ、「フロー型亜鉛空気電池」(同社)とも呼ぶ。2025年度以降の実用化を目指すという。

既存のRFBとは構造が逆

 もっとも、このフロー型亜鉛空気電池は、RFBの代表格であるバナジウム(V)RFB(VRFB)と比べると、電解液をためるタンクと充放電を担う電極の数や配置がほぼ逆になっている(図1)。

(a)シャープのフロー型亜鉛空気電池
(a)シャープのフロー型亜鉛空気電池
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(b)バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)
(b)バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)
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図1 従来型レドックスフロー電池とは似て非なる斬新な構造に
シャープが開発したフロー型亜鉛空気電池の概要(a)。一見、従来のレドックスフロー電池(b)に似るが、(i)タンクが中央に1つ、(ii)セルが2つ、(iii)正極(空気極)から酸素(O2)を出し入れ、(iv)イオンではなく、ZnやZnOといった材料に電力を蓄積して用いている、といった違いがある(出所:(a)はシャープの図を日経クロステックが加工、(b)は日経クロステック)

 具体的には、VRFBは、タンクが正極用と負極用で2つに分かれ、正極電解液と負極電解液がセパレーターを介して反応するセルスタックが1つである。一方、今回のフロー型亜鉛空気電池は、タンクは1つで、いわゆる金属空気電池が2つある。しかも、一方が充電専用、もう一方が放電専用と役割が分かれている。

構造の一部に燃料電池

 電力源となる活物質は亜鉛(Zn)の微粒子で、アルカリ性の水溶液中に分散させている。シャープはこれを「亜鉛スラリー(泥)」と呼ぶ(図2)。放電用セルでこれを酸化し、酸化亜鉛(ZnO)となる際に電力を取り出す。酸化に用いる酸素(O2)は空気から取り出すため、この放電用セルだけを見ると、亜鉛スラリーを燃料とする燃料電池と言ってよい。しかもこの燃料は水溶液であるため発火などのリスクがなく、トラックなどによる運搬も容易だという。

図2 亜鉛スラリーはさらさらとドロドロの中間
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図2 亜鉛スラリーはさらさらとドロドロの中間
シャープが開発した亜鉛スラリー。比重は2~3。一定の粘性を備えている。ポンプで循環させることで、デンドライトの電極への固着を防げるという(写真:シャープ)

 放電時に生成されたZnOは電解液と共にポンプによって貯蔵タンク、そして充電用セルに送られる。電解液中のZnが少なくなると、今度は充電用セルで、ZnOを還元してZnに戻す。そしてそれがまたタンク、および放電用セルに送られ、放電を再開できる。