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 長野県と県内全77市町村は2022年8月から共同で電子図書館サービスを始めた。1カ月で1万1000冊が貸し出された。長野県は財政規模が小さい市町村が多い。各市町村が電子図書館を運営する上では、予算確保が課題だった。そこで県と各市町村の協働型とし、コストや運営の負担を分担することで県民がサービスを利用できる環境を提供。電子図書館を自治体が「協働運営」するのは全国初だ。

 新設の電子図書館サービス「市町村と県による協働電子図書館(デジとしょ信州)」は長野県内に住む人、もしくは通勤や通学をする人なら誰でも利用できる。2022年8月5日からサービスを始めた。サービス開始当初は、1万8000冊以上の電子書籍を用意しており、今後さらに増やしていく。利用者はWebページから、貸し出し予約の手続きをして、パソコンやスマートフォン、タブレットから閲覧できる。

「デジとしょ信州」の利用画面
「デジとしょ信州」の利用画面
(撮影:日経クロステック)
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最大の課題は「予算確保」

 電子図書館サービス誕生の背景には、災害や新型コロナウイルス禍により図書館の休館が余儀なくされたことへの課題意識がある。新型コロナウイルス感染症の流行が広がった2020年4月ごろには、長野県内の図書館の約70%が休館した。こうした状況を受け、原則「休館」のない電子図書館サービスの立ち上げ検討に動き始めた。その活動の1つとして、2021年1月に県内の公立図書館56館を対象にアンケートを実施。回答から具体的な課題が浮き彫りになった。

 協働で電子図書館を運営するために設立する「市町村と県による協働電子図書館運営委員会」の委員長を務める県立長野図書館の森いづみ館長は「導入の最大のハードルは予算確保だった」と話す。アンケートの結果、電子図書館サービスの導入に向けた課題として、回答した図書館の9割以上は「予算の確保」を課題に挙げた。「望ましい導入方法」については、「コンテンツの選定、利用方法、利用支援などで市町村を越えて連携できること」への回答が約7割、「複数の市町村が連携し、共同で(電子書籍を)購入できること」が約6割だった。

 アンケートの結果を受け、2021年8月から県と市町村の協働で、検討のためのワーキンググループ(WG)を設置。約8カ月間で50回以上のミーティングを重ねた結果、県の事業に市町村が従う形ではなく、各市町村が主体的に取り組み協働する形で事業を運営すると決めた。運営委員会の副委員長と統括会議議長を務める坂城町立図書館の鈴木康之館長は「各市町村間の距離は遠く、皆で集まるのはこれまで難しかったが、オンライン会議が浸透したことでスムーズに議論が進んだ」と話す。