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 東京都の小池百合子知事と宮坂学副知事は2022年9月9日、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進強化のための新団体「GovTech東京」の設立構想を発表した。公務員では実現が難しい待遇を用意することで高度なスキルを持つデジタル人材を確保し、都庁だけでなく区市町村も含めた都全体でデジタルシフトを加速させる狙いだ。

東京都の小池百合子知事(右)と宮坂学副知事
東京都の小池百合子知事(右)と宮坂学副知事
(写真:日経クロステック)
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都政DX、依然として残る課題

 スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した2021年版の世界デジタル競争力ランキングにおいて日本は64カ国中28位――。日本の首都として「デジタル先進都市東京」を名乗るには低すぎる順位だ。

 デジタル化の遅れを受け、東京都は2021年3月に「シン・トセイ 都政の構造改革QOSアップグレード戦略」(シン・トセイ戦略)を発表した。行政手続きのデジタル化など7つのプロジェクトを掲げ、都政のDXを進めてきた。約1年半たって一定の成果を出しつつある。主要かつ都の権限で対応可能な119の行政手続きのうち、約94%に当たる112の手続きをデジタル化した。

 都庁のDXは進む一方で、自治体に目を向けると苦戦が目立つ。都内の区市町村を対象に2021年に実施したアンケートによると、90%以上の担当者がデジタル人材が不足していると回答したという。

 シン・トセイ戦略ではさらなるDX推進のため、体制を検討するとしていた。デジタル人材不足の状況が長期化するなか、都が自らの宿題に出した答えは、DXの枠組みを都庁の外に切り出すことだった。

地方公務員法に縛られない働き方や待遇

 宮坂副知事はデジタル部隊の組織文化・働き方の変革なしに高い開発力や生産性は得られないと考えていた。人事制度を変えようとしても法律の壁が立ちはだかり、変革のスピードに限界を感じたこともあったという。そこで思い切って、都庁の外に新しいチームをつくるという選択に至った。

 小池知事は9日の発表会で「東京の未来を切り開くために必要なのはイノベーションだ」と強調した。GovTech東京を行政と民間が共働するためのプラットフォームと位置付け、官民共創によるイノベーションが生み出されることに期待を込めた。

 GovTech東京は新たに採用するデジタル人材と都庁からの出向者などで構成される、半官半民の組織として出発する予定だ。詳細は未定だが、初年度は数十人程度を採用する見込み。都庁の組織とは異なるので地方公務員法に縛られず、ジョブ型雇用制度や民間を参考にした給与体系、リモート勤務といった柔軟な働き方を導入できる。高度デジタル人材を引き付ける制度を整備できるため、採用の強化が見込める。

 都が取り組みたいDX関連政策を着実に実行するために、あえて別組織という形を取って「かわいい子には旅をさせる」のだ。