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 デジタル庁が取り組む組織改革が動き始めた。霞が関の縦割りを反映して、重複や乱立が放置されていたプロジェクトの整理と統廃合を進める。経営の視点から各プロジェクトの目標と成果の評価方法を定め、達成に必要な人的資源を最適配分する。民間出身である浅沼尚デジタル監の「経営手腕」が試される。

 2022年4月26日に就任した浅沼デジタル監が改革の指揮を執る。改革を象徴する動きが、長く併存していた2つの行政手続きサイト「e-Govポータル」と「マイナポータル」を中長期で統合する方向性を打ち出したことだ。2つの政府サイトは、元は異なる省庁が運営し、デジタル庁に移管しても「隣が何をしているか知らずに仕事をしている」(デジタル庁職員)という、寄り合い所帯ぶりが現れた存在だった。

 このほかにも特定プロジェクトでの独自開発をやめ、政府全体で使える機能開発に格上げすることを決めるなど、改革は形を見せつつあるという。これらの取り組みで実際に「合併効果」を生みだすことが、デジタル庁が組織改革で目指す最初の目標だ。

縦割りだった2つの政府サイト、1人のリーダーにチームを集約

 e-Govポータルは、古くは行政管理庁に由来する総務省行政管理局が担当し、「電子政府の窓口サイト」を目指して2000年代から運用する。しかし一般市民にはなじみが薄い状態で、活発な手続きは社会保険労務士向けなど一部の士業向けに限られるという。法令検索や情報公開請求などの機能を追加したが、市民生活に密着した手続きは充実できなかった。

マイナポータル(左)とe-Govポータル(右)のトップ画面。内閣官房と総務省を母体とする2つの行政手続きの役割や機能統合をデジタル庁で検討する体制ができた
マイナポータル(左)とe-Govポータル(右)のトップ画面。内閣官房と総務省を母体とする2つの行政手続きの役割や機能統合をデジタル庁で検討する体制ができた
(画像:デジタル庁)
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 一方マイナポータルは、マイナンバー制度の拡大に取り組んだ旧・内閣官房番号制度推進室(デジタル庁に移管)などが2017年に開設。最近は地方自治や医療分野などマイナンバーカードを使う手続きで連携を強化し、マイナポイント付与などで市民の利用は増えた。ただし手続きの充実はこれからだ。

 歴史的な経緯もあり分野や役割を分けてきたが、同じ士業向けの手続きが種類によって両方にまたがるケースがあるなど、整理統合が必要な状況だった。しかし2021年9月のデジタル庁発足後もリーダー役となる担当参事官は別で、実態として各サイトの出身官庁の体制を引きずった別プロジェクトとして動いていた。

 浅沼改革の下で統合の方針を固め、2022年8月に2つのプロジェクトを1人の参事官の下に置いた。プロジェクトは併存するものの、このリーダーの下で、ともに利用できる機能の開発など、プロジェクトをまたいだ機能の整理統合の議論がすでに始まっているという。

 他の行政手続きサイトも含め、2つを単一のサイトに一本化するか併存させるかは未定だ。ただしより重要なのは、「入り口」の統合ではなく機能の整理統合だ。プロジェクトの整理統合に携わる参事官は「地方自治体が使いやすいよう、時間はかかるが外部から利用するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)も共通化すべきだ。まずはこうした機能レベルの統合を議論している」と説明する。