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 高純度アルミナ大手のオーストラリアAltech Chemicalsとセラミック技術の研究所ドイツFraunhofer Institute for Ceramic Technologies and Systems(IKTS)はオーストラリア時間の2022年9月14日、固体型の定置型蓄電池「Cerenergy」を商品化すると発表した(図1)。特徴は既存のリチウム(Li)2次電池(LIB)に比べて長寿命で材料の供給不安が少なく材料の耐熱性が高いことである。

図1 Cerenergyのモジュール
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図1 Cerenergyのモジュール
標準的なモジュール容量は10kWh(画像:Altech Chemicals)

 Altech Chemicalsのエネルギー関連のドイツ法人Altech Energy HoldingsとIKTSは、合弁会社ドイツAltech Batteriesを共同で設立し、ドイツ・ドレスデン近郊に年産100MWh規模の量産工場を建設するという。出資比率はAltech Energyが75%、IKTSが25%である。

負極に溶融ナトリウム

 Cerenergyは、IKTSが開発した「ナトリウム塩化ニッケル電池(Sodium Nickel Chloride Battery)」の商品名。Altech Chemicalsは「ナトリウムアルミナ固体(Sodium Alumina Solid state:SAS)電池」とも呼んでいる。

 それらの呼び方の通り、充電前の正極側材料は、食塩(NaCl)と活物質として顆粒(かりゅう)状の金属ニッケル(Ni)、セパレーターの役割を果たすセラミック電解質にβアルミナ(一般的にはNa2O-11Al2O3)を利用する(図2)。充電前は負極側に活物質はなくすべての材料が固体である。

図2 βアルミナを用いた固体電解質(セパレーター)
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図2 βアルミナを用いた固体電解質(セパレーター)
ゾルゲル法で製造しているもようだ(画像:Altech Chemicals)

 充電時は、2NaCl+Ni → NiCl2+2Naの反応が進む。セルの温度をセ氏270~350度に保つため、負極に溶融した金属Naが堆積する(図3)。初期充電前、あるいは完全放電後に負極活物質が負極側にない電池は最近の流行で、しばしば「負極フリー(Anode Free)」電池とも呼ばれる。

(a)初期充電前(または完全放電後)のセルの内部の様子
(a)初期充電前(または完全放電後)のセルの内部の様子
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(b)充電中のセルの様子
(b)充電中のセルの様子
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図3 充電前は負極に活物質がない
初期充電前は負極(βアルミナのセラミック電解質の外側)に活物質がない(a)。充電を始めると、内部からNaイオンがβアルミナを透過して負極に溶融Na(青い液体)として堆積する(画像:Altech Chemicals)

 放電時の反応は、2Na+NiCl2 → 2NaCl+ Ni+電力 となる。

 これを開発したのはIKTSで、2010年代半ば以降、3500万ユーロ(1ユーロ=130円で約45.5億円)を研究開発に投資。さらにパイロットプラントの建設に2500万ユーロをつぎ込んだという。