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 ドイツBosch(ボッシュ)は、電動ブレーキブースターの世界生産台数を拡大する(図1)。現在の年間800万台から2026年には同1100万台へと増やす。そのうちの約6割は、日本の自動車メーカーに納入する計画だ。同社の電動ブレーキブースターの世界生産台数は、今後、年平均で7%以上増加する見込みとする。

図1 ボッシュの電動ブレーキブースター「iBooster」
図1 ボッシュの電動ブレーキブースター「iBooster」
ブレーキペダルを踏み込むと、入力ロッドがブースター本体と連動して動く。その動きをペダル・ストローク・センサーで検知し、得た情報を基に電子制御ユニット(ECU)がモーターを制御。モーターのトルクを3段ギアユニットでブレーキペダルの踏力を補助する力に変換する。マスターシリンダーは、ブースター本体からの力を油圧に変換する。(写真:日経クロステック)
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 その拡大路線の一環として、同社は2022年9月20日、電動ブレーキブースターの生産を同社日本法人の栃木工場で開始した(図2)。当初はサンプル出荷でスタートし、同年11月に製品の出荷を始める。

図2 ボッシュ日本法人の栃木工場
図2 ボッシュ日本法人の栃木工場
(写真:ボッシュ)
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 ブレーキブースターは、油圧式の常用ブレーキにおいてブレーキペダルの踏力(言い換えると、油の昇圧)を補助するものだ。従来のエンジン車では、エンジンの吸気負圧を利用してブレーキのマスターシリンダーを押すことでそうした補助を行う真空ブースターが使われていた。

 これに対し、電動ブレーキブースターでは、内蔵するモーターでマスターシリンダーを押して昇圧を補助する。エンジンを搭載しない電気自動車(EV)やエンジンの作動頻度が低いハイブリッド車(HEV)などの電動車で採用が増えている。

 また、衝突被害軽減ブレーキのような緊急時の自動ブレーキにおいても、電動ブレーキブースターを従来の横滑り防止装置(ESC)と置き換えて、もしくは組み合わせて使うことで、自動ブレーキの応答性を高められるという利点を享受できる。例えば、(1)自動ブレーキを適用するかの判断をぎりぎりまで引き延ばして誤介入を減らす、(2)交差点での飛び出しなどより高い応答性が求められるシーンに対応する――といったことが可能になる。このため、エンジン車での採用も増えてきている。