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 HPC(High Performance Computing)やAI(人工知能)/機械学習といった大量のデータを短い時間で演算することが求められるプロセッサーICで、米NVIDIA(エヌビディア)と米Intel(インテル)、米AMD(Advanced Micro Devices)がバトルを繰り広げている。5年ほど前まで、この市場はNVIDIAのGPGPU(General Purpose Graphics Processing Unit)がほぼ独占していた。ここ最近、MPU(マイクロプロセッサー)大手2社のIntelとAMDが本格参入して、NVIDIAの牙城を崩そうとしている。2022年8月に行われたプロセッサー関連の国際学会「Hot Chips 34」では、3社が競うように最新の製品を紹介した。

 米国エネルギー省(DoE:Department of Energy)のHPC技術開発プロジェクト「Exascale Computing Project(ECP)」 ホームページ のLori Diachin氏(Deputy Director)によると、HPC向けスーパーコンピューターにおいてGPGPUの役割は非常に大きい(図1)。2018年のスパコン「Summit」では全演算の96%をGPGPUが担い、2022年のスパコン「Frontier」では98%がGPGPUを担っているとした。MPU(マイクロプロセッサー)の担う演算は数%にすぎない。

図1 HPCではGPGPUの役割が大きい
図1 HPCではGPGPUの役割が大きい
2022年7月12~14日に米国サンフランシスコで開催の半導体製造のイベント「SEMICON West 2022 HYBRID」において、米国エネルギー省(DoE:Department of Energy)のHPC技術開発プロジェクト「Exascale Computing Project(ECP)」のLori Diachin氏(Deputy Director)が見せたスライドである(画像:ECPおよびSEMICON West)
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 NVIDIAがGPGPUで独占的な地位を得たのは、同社がCUDA(Compute Unified Device Architecture)と呼ばれるGPU向けプログラミング環境を整備したことが効いている。これにより、画像処理用だったGPUが汎用的な並列演算器として利用できるようになった。CUDAが登場した当初、その評判は必ずしも良くなかった。MPUのようなシーケンシャル処理のプロセッサーのプログラム開発に慣れたソフトウエアエンジニアは、CUDAの使い勝手が悪いとこぼしていた。しかし、並列処理は研究開発の格好のテーマであることから、大学や企業の研究所ではCUDAとGPUを使う事例が増えていき、CUDAを扱える人口が膨らんだ。CUDAの利用人口増大に引っ張られたこと、AI/機械学習というキラーアプリケーションが登場したことで、NVIDIAのGPGPUのポジションは強固になっていった。

 一方でGPGPUの重要度が上がるにつれて、市場では「供給元が1社ではまずい」という考えが強まっていった。ECPのDiachin氏は、2022年7月に米国サンフランシスコで開催の半導体製造関連イベント「SEMICON West 2022」において次のように説明した。ECPは2016年に開始されたが、同氏によれば、2018年になってもGPGPUのメーカーはNVIDIAだけで、これを憂慮したECPは、MPUメーカーのIntelとAMDにGPGPU開発を持ち掛けたという(図2)。それだけでMPUの2社がGPGPU開発を始めたかどうかは定かではないが、2022年現在、両社はGPGPUの開発に本腰を入れており、その成果のICはDoEのスーパーコンピューターに搭載されている。

図2 HPC向けGPGPUの供給元を増やす
図2 HPC向けGPGPUの供給元を増やす
ECPのDiachin氏によれば、GUGPU向けICの供給元は2018年ごろまでは米NVIDIA(エヌビディア)1社だったという。米AMD(Advanced Micro Devices)や米Intel(インテル)に参入を促したとする(画像:ECPおよびSEMICON West)
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