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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、全段固体燃料の小型衛星打ち上げ用ロケット「イプシロン」6号機を、2022年10月7日に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げる。

イプシロンロケットの打ち上げ
イプシロンロケットの打ち上げ
革新的衛星技術実証2号機を搭載したイプシロンロケット5号機。2021年11月9日に撮影。(写真:JAXA)
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 搭載するペイロード(積載物)は合計8機の人工衛星だ。そのうち2機は、宇宙ベンチャーであるQPS研究所(福岡市、以下、iQPS)の合成開口レーダー(SAR)*1衛星「QPS-SAR-3」「同4」。この2機はイプシロンロケットとしては初の商業契約に基づいて打ち上げられる。打ち上げを控えて両衛星はそれぞれ「アマテル-I」「アマテル-II」と命名された。アマテルは日本神話の天照大神の別称だ。

*1 合成開口レーダー(SAR):電波レーダーを使って24時間昼夜を問わず、悪天候でも地上を観測(撮像)できるシステム。高速で軌道を飛ぶ衛星から発した電波で地表を照射し、その反射波で地表を撮像する。雲を透過する帯域のマイクロ波を使うので、天候に左右されず撮像可能。可視光や赤外線の反射光を撮影する光学衛星と異なり、地表に日の差さない深夜でも地表を撮像できる。

 その他のうち1機は、JAXAが企画・運営している宇宙技術開発プログラム「革新的衛星技術実証プログラム」*2の3号衛星「小型実証衛星3号機(RAISE-3:RApid Innovative payload demonstration SatellitE-3)」。そして、同プログラムで選定された教育機関・研究機関・民間などが製作した質量1~3kgの極超小型衛星(キューブサット)5機だ。これら8機の衛星を、地球を南北に周回する太陽同期極軌道に投入する。

6号機への衛星の搭載形態のCGイメージ
6号機への衛星の搭載形態のCGイメージ
(出所:JAXA)
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100kg級衛星が3つ並び、搭載アダプターの根本に、キューブサット(数kg程度の小型人工衛星)5機が専用の放出アダプターを介して搭載される。(出所:JAXA)
6号機への衛星の搭載形態イメージ
(出所:JAXA)
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*2 革新的衛星技術実証プログラム:超小型人工衛星を活用した基幹的部品や、新規要素技術の軌道上での実証を適時かつ安価に実施するためのプログラム。内閣府が策定した「宇宙基本計画」の定める「宇宙システムの基幹的部品等の安定供給に向けた環境整備」の一環。JAXAが2016年から実施している。教育機関や研究機関、民間企業から広く新たな宇宙技術を募集し、宇宙空間での実証実験を実施する。低コストかつ高頻度、かつ民間活力を利用した高速の研究開発を目指した計画。

 iQPS衛星の搭載は、2022年4月に急きょ決定した。その結果、革新的衛星技術実証プログラムで選定されていた金沢大学と東京工業大学、静岡大学の超小型衛星3機が搭載されないことになった。3大学の衛星は、今後、イプシロンロケットを製造したIHIエアロスペース(東京・江東、以下、IA)が費用を負担して用意する別の打ち上げ手段で打ち上げる予定となっている。

 突然の「iQPS衛星の搭載」の背景を探ると、今回のイプシロンロケット6号機打ち上げが持つ意味が見えてくる。それは「急がれるロケット打ち上げの民間移管」だ。