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 NECがデータ間の隠れた関係を推定する人工知能(AI)、「リンク予測AI」の開発を進めている。このたび、カゴメと連携して食材間の関係を分析し、野菜嫌いの子どもでも食べられる野菜プリンのメニュー開発に成功した。学習させるデータによって新製品開発や人材採用など様々な分野に応用できる新たな手法としてリンク予測AIを位置付け、2023年度中の商用化を目指す。

NECとカゴメが発表した「AI(愛)のプリン」全6種
NECとカゴメが発表した「AI(愛)のプリン」全6種
(写真:日経クロステック)
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 2022年8月にはカゴメと共同で、AIを活用して開発したプリンのメニューを発表した。その名も「AI(愛)のプリン」だ。メニューは全6種類で、いずれも野菜をふんだんに使っているのが特徴である。子どもの野菜嫌い克服と親子のコミュニケーション活性化を目指し、専用ホームページでレシピを無償公開している。

 カゴメが実施した「子どもの野菜に対する意識調査(2019年)」によると、野菜好きな子どもであってもそのうち74%は嫌いな野菜があるという。AIのプリンには、この調査を参考にして1メニューにつき1種類の野菜を使っている。

 「AIのプリン」の製品化に協力した、著名なプリン職人で洋菓子店「プルシック」オーナーシェフの所浩史氏は「スイーツの歴史を見ると、野菜で残っているのはカボチャかスイートポテトくらいしかない。スイーツは食事と違って必ず食べなければならないものではないので、スイーツとしての確固たるおいしさが担保されていないと生き残れない」と指摘する。

2022年8月2日に都内で開いた会見の様子
2022年8月2日に都内で開いた会見の様子
左からカゴメの宮地雅典執行役員野菜をとろうキャンペーン推進室長、「プルシック」オーナーシェフの所浩史氏、NECデジタルテクノロジー開発研究所長の池谷彰彦氏(写真:NEC、カゴメ)
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 リンク予測AIを用いたのは野菜スイーツの高いハードルを越えるためだ。リンク予測AIが提案した個々の野菜と相性のいい食材、例えばホウレンソウにはココナツ、カボチャにはレーズンを組み合わせることで、それらの野菜が苦手な子どもでもおいしく食べられるメニューをつくれたという。

 リンク予測AIは食材の組み合わせに特化したAIではない。NECによれば「データ間の隠れた関係を推定する説明可能性AI」であり、新製品開発や人材採用など様々な場面での活用が期待できる技術であるという。それはどんな技術なのか。