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 前橋市は2022年9月30日、眼鏡専門店を運営するジンズホールディングス(HD)や群馬銀行など8社と共同で、新会社のめぶくグラウンドを2022年10月6日に設立すると発表した。同市はかねて注力する「スーパーシティ」構想を加速させるため新会社を設立した。狙いは2つありそうだ。

株式会社化で独自IDに柔軟な投資

 狙いの1つは、独自の「めぶくID」とデータ連携基盤を活用した市民サービスの拡充を加速させることだ。

 めぶくIDとは、同市がこれまで実装に取り組んできた「まえばしID」の名称を新会社設立に合わせて変更したもの。スマートフォンでマイナンバーカードによる本人確認を実施し、電子証明書を発行してIDとして使えるようにする取り組みだ。2022年6月にはまえばしIDを中核としたデジタル地方創成計画がデジタル田園都市国家構想推進交付金のデジタル実装タイプ(TYPE2/3)に採択された。

 ただ、他自治体におけるスーパーシティの取り組みには社会実験でクローズし、実社会への普及に至らないケースもある。「株式会社とすることで、組織として(めぶくIDやスーパーシティを)社会に実際に展開していけるようにしたい」。同日の記者会見で、新会社社長に就任する前橋商工会議所の曽我孝之会頭は意気込みをこう語った。

めぶくグラウンドの発起人と取締役
めぶくグラウンドの発起人と取締役
(写真:日経BP 総合研究所)

 同じく新会社の取締役に就任する日本通信の福田尚久社長も、「デジタル系事業には先行投資が必要になる場合が多いが、行政の予算は単年度主義であり先行投資が難しい。株式会社化によって、事業ステージに応じた柔軟な投資を実施していきたい」とした。

日本通信の福田尚久社長
日本通信の福田尚久社長
(写真:日経BP 総合研究所)

 新会社設立に参画する8社はいずれも前橋市や群馬県にゆかりがある。ジンズHDとカラオケ店「まねきねこ」などを運営するコシダカホールディングスはいずれも前橋市が創業の地で、今もそれぞれ前橋本社を構える。種苗大手のカネコ種苗、建築設備を営むヤマトは前橋市に本社があり、日本通信の福田社長は前橋高校の卒業生だ。群馬企業の有力メインバンクである群馬銀行、東和銀行、しののめ信用金庫も名を連ねる。

 新会社の資本金3億円のうち、前橋市は500万円を出資する。残りの2億9500万円の割合は、3金融機関が1500万円ずつで、企業5社は5000万円ずつである。設立発起人代表である山本龍前橋市長は「今後、官民から広く参画を募りたい」とした。

山本龍前橋市長
山本龍前橋市長
(写真:日経BP 総合研究所)

 新会社の主な収入源となるのは、めぶくIDとデータ連携基盤を使う他の自治体からの利用料である。2021年には前橋市と北海道江別市などが、デジタル化の推進で自治体が連携するための協議会を設立しており、同協議会の参加自治体が利用するとみられている。協議会に参加していない自治体の活用も視野に入れる。