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 産業技術総合研究所(産総研)が2022年9月30日、メディアに量子デバイス研究の現場を公開した。産総研はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクト「量子計算及びイジング計算システムの統合型研究開発」でNECや早稲田大学らと産学官連携による研究を進める。心臓部となる研究施設をのぞくと、量子デバイス開発で米国や中国に後れをとる日本が勝ち筋の創出を目指す技術分野が見えてきた。

 「量子コンピューティングで日本の立ち位置が遅れているのは事実だと思うが、量子コンピューターはさまざまな技術の集大成。部品や製造プロセスなどで世界に誇る技術を生み出していく」。NEDOプロジェクトの研究開発責任者を務める産総研新原理コンピューティング研究センターの川畑史郎副研究センター長はそう意気込みを語る。

 量子コンピューターや量子アニーリングマシンといった量子デバイスの開発を進めるに当たっては、学術的な理論やシミュレーションだけではなく、設計や製造、検査、動作評価といったプロセスが必要になる。産総研が公開したのは製造や検査、動作評価で用いる設備だ。

製造や検査、動作評価に用いる先端設備を公開した
製造や検査、動作評価に用いる先端設備を公開した
(出所:産総研の資料をもとに日経クロステック作成)
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 産総研は現在、量子ビットを搭載した演算実行部分と量子ビットに演算内容を指示する電磁波を入出力する命令制御部分の両方を、絶対零度に近い温度まで冷却が可能な希釈冷凍機の中に入れて動作させる技術の開発を目指している。

 現在の超電導量子コンピューターは基本的に命令制御部分を希釈冷凍機の外に置き、希釈冷凍機の中にある演算実行部分とケーブルでつなぐ。だが量子ビットの数を増やすと演算実行部分と命令制御部分をそれだけ多くのケーブルで物理的につなぐ必要が生じる。そのため命令制御部分を希釈冷凍機の外に置く方式では、量子ビットの大規模化が難しい。

 そこで産総研は命令制御部分をチップ化(半導体CMOS集積回路化)し、演算実行部分と同じ希釈冷凍機内に入れられるようにすることで、この問題の解決と低電力化を図ろうとしている。