アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)の治療を目的とした新しい医療機器の開発が進んでいる(図1)。東北大学発スタートアップのサウンドウェーブイノベーション(東京・中央)が手掛ける治療装置がそれだ。患者の脳に特殊な条件の超音波を照射し、認知機能低下の抑制につなげる。現在、同様の原理でアルツハイマー病の治療を目的とした治療装置は日本で薬事承認を受けておらず実用化されていない。
患者は専用のヘッドセットを装着し、あおむけの姿勢で治療を受ける。照射口は、頭蓋骨の厚みが比較的薄いこめかみ部分に当たるように設計されている。治療に用いるのは低出力パルス波超音波(Low-intensity Pulsed Ultrasound:LIPUS)で、連続的にではなく断続的に超音波を照射する(図2)。
治療に最適な照射条件は東北大学大学院医学系研究科が見いだした。具体的には周波数0.5MHz(メガヘルツ)のパルス波を短時間(波数32)だけ照射するのを繰り返す。繰り返しの間隔は2.56ms(ミリ秒)で、左右からの照射タイミングが互い違いになるように照射する。結果、患者にとっては1.28msごとにパルス波が照射される形だ。パルス波の出力の強さは0.24W/cm2程度で、健康診断などの検査で使う超音波と同等か場合によってはそれより小さいという。