政府は2022年10月7日、地方自治体の情報システムを標準化・共通化する方向性を定めた「地方公共団体情報システム標準化基本方針(以下、基本方針)」を閣議決定した。2020年9月に菅義偉首相(当時)が自治体ごとに異なる行政システムを2025年度末までに統一するよう指示したことでスタートした自治体システム標準化は、この閣議決定をもって期限やクラウド基盤、目標などが「確定」したことになる。
「2025年度までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システム移行を目指す。2018年度比でシステム運用経費の3割減も目指す」――。河野太郎デジタル相は同日、基本方針の閣議決定を報告した記者会見で、標準化の目標をこう強調した。
自治体システム標準化とは、全国約1700の自治体が2025年度末までに、デジタル庁が整備するマルチクラウドである「ガバメントクラウド」を活用した標準準拠システムに移行するという取り組みだ。標準化の対象となるのは20の業務で、その業務システムの「標準仕様書」は2022年8月31日に出そろっている。
基本方針の根拠は、自治体システム標準化を推進するため2021年9月1日に施行された「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(標準化法)」である。基本方針が閣議決定されたことで、自治体にとってもシステム開発を担うITベンダーにとっても標準化に向けた動きがいよいよ本格化する。
ガバメントクラウド「以外」も条件付きで認める
基本方針で注目すべき点は3つある。1つ目は移行の期限が確定した点である。基本方針では、2025年度末までに標準準拠システムへの移行を目指すとしたうえで、2023年度以降を移行支援期間と定めた。
自治体などからはこれまで「2025年度末までの移行は困難で期限を緩和すべきだ」との意見があったが、基本方針では反映されなかった。一方で、基本方針ではデジタル庁と総務省は移行スケジュールや移行に当たっての課題把握と解決を自治体と協力して取り組むとした。
注目すべき2つ目は、ガバメントクラウド以外のクラウドの利用を認めた点である。基本方針はガバメントクラウドの利用を「第一に検討すべきだ」とした一方で、ガバメントクラウド以外のクラウド環境も条件を満たせば国の補助金の対象となるとした。
国は自治体システム標準化への移行作業を支援するため、総額1825億円の補助金を用意している。総務省が地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に設置した「デジタル基盤改革支援基金」から、各自治体に配分する。補助金の対象は原則としてガバメントクラウド上で構築された標準準拠システムへの移行費用である。