「ノイキャン」エアコンで差を付ける──。ダイキン工業が家庭用エアコンの最上位機種「うるさらX」に静音化技術を標準搭載し、2022年11月1日に市場投入する(図1)。静音化部品「吸音マフラー」を室外機に取り付け、騒音を抑える。これにより、室内側の騒音を低減して静かな運転音にする。逆に従来と同等レベルの運転音でもよければ、その分だけ加湿量や換気量を増やせる。
キーデバイスである吸音マフラーは、同年1月に発表した「加湿・換気静音ユニット」をベースに、コンパクト設計を施したもの(図2)。富士フイルムが持つ音響メタマテリアル技術を応用し、エアコン向けに防音性と通風性を確保した。騒音低減の仕組みは、位相反転。入射音の一部の位相を反転させ、通過音と合成する。すると、位相反転した部分が打ち消し合って騒音が減る、いわゆるノイズキャンセリング(ノイキャン)と同様の仕組みだ。
吸音マフラー本体の材料はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)。ガラス繊維は含まない。左右に別れる2つの筐体(きょうたい)の内部に、音の位相をずらす経路を形成する部品が入っている。加工方法は射出成形。表面処理は施していないという。吸音マフラー本体の外側は、内部の結露を防ぐためにポリエチレン(PE)製の断熱材で覆った。
うるさらXの最大の付加価値は無給水加湿。外気中の水分を利用して加湿することで、給水せずに暖房する。これにより、暖房時でも乾燥を防ぐ機能を実現した。1999年に開発した技術だが、同社が持っていた基本特許が切れたこともあり、競合するパナソニックが2021年に類似機能を搭載するほどの人気機能だ。
半面、室外機の風量を増やす必要があり、室外機側の騒音が大きくなるという課題があった。この課題を解消するために開発したのが吸音マフラーである。室外機に搭載するに当たっては、設置作業の邪魔にならず、かつ騒音低減効果を損なわない箇所を探したという(図3)。