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 セブン銀行が新規ATM設置場所の選定やローン審査などでAI(人工知能)の活用を模索している。AIを業務活用する際に問題となり得るのが環境変化によってAIの精度が落ちる「ドリフト」だ。優れたデータサイエンティストを保守運用に充てるのが難しい中、ツールの導入によるAI品質管理の省力化と標準化を進めている。

 セブン銀行は2022年10月から、AIモデルを評価しリスクを監視するツール「Robust Intelligence」を本格導入する。米Robust Intelligence(ロバストインテリジェンス)が提供するツールだ。インドネシアにおける新規ATM設置候補地の利用件数予測モデルにRobust Intelligenceを適用する計画だ。

Robust Intelligenceをインドネシアの新規ATM設置場所の選定に用いるAIに適用する
Robust Intelligenceをインドネシアの新規ATM設置場所の選定に用いるAIに適用する
(出所:セブン銀行)
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 セブン銀行は2022年3月からPoC(Proof of Concept、概念実証)を進めて、AIの品質管理における有用性を検証した。企業がAIのリスクに責任を持ち安全に使っていくべきだとする「Responsible AI」の意識の広がりに対応している。

環境変化によってAIの精度が劣化する「ドリフト」

 AIの業務活用にはリスクが伴う。その1つが環境変化によってAIの精度が劣化する「ドリフト」だ。一般に学習済みモデルの精度は運用を開始した直後が最も高く、次第に低下する。流行やトレンドの変化、戦争や疫病のまん延といった事業環境の変化があった場合や、新たな顧客層が増えるなどしてAIへの入力データが変化した場合、AIは適切な判断を下せなくなっていく。

 セブン銀行は、ATMに現金を補充する際の目安となるATM出入金の差額予測や、カードローン審査、新規ATM設置場所の選定などといった用途でAIの活用を模索している。従来はドリフトに対応するため、開発に携わったデータサイエンティストらが手作業でAIをテストしていた。しかし「テストケース作成にはノウハウやセンスが必要な上、手間もかかる。いかに省力化を進めるかが課題だった」(セブン銀行コーポレート・トランスフォーメーション部の中村義幸AI・データ推進グループ長)。

 そこでまず2022年3月から5月にかけて、カードローン審査に用いるAIの品質管理に、Robust Intelligenceを適用し始めた。このAIは、nanacoのポイントや電子マネー使用といったnanaco利用履歴を与信管理に用いる。