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 東レが電気自動車(EV)の本格的な普及を視野に、自動車素材の新たな企画・開発体制を構築している。2022年6月、自動車素材の提案・技術マーケティングを手掛ける「オートモーティブセンター」(名古屋市)と、電池材料などを開発する「環境・エネルギー開発センター」(大津市)を統合し、「環境・モビリティ開発センター(EMC)」(大津市)を新設した。

新組織のショールーム(名古屋市)の様子
新組織のショールーム(名古屋市)の様子
安全性、軽量化、電動化、快適性の各ソリューションを展示している。(写真:東レ)
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 東レ理事で新組織の所長を務める真壁芳樹氏は「東レが保有する各種の先端材料(繊維やフィルム、樹脂、炭素繊維複合材料など)を組み合わせた新たな提案を推進したい」と意気込む。新組織では事業横断的な提案が可能になる。真壁氏は「電動化や軽量化、快適性、安全性、自動運転といった切り口で、ソリューションを提案していく」と話す。

 東レはこれまで、繊維やフィルム、樹脂などの各事業部門がそれぞれに提案活動を進めてきた。しかし、EVシフトを背景に自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)からの要求は多様化しており、従来の体制では臨機応変な提案が難しくなってきている。例えば、オートモーティブセンターは、これまで主に軽量化への対応を重視しており、炭素繊維複合材料を中心とする提案に偏っていたという。こうした課題を新組織によって解決する。

 新組織は、世界の開発拠点とも連携する。特に重視するのは「EVをはじめ最先端の技術開発が進む欧州や、最大の自動車市場である中国」(真壁氏)である。

 東レは、欧州に自動車素材の開発拠点「東レオートモーティブセンター欧州」(ドイツ・ミュンヘン近郊)を、中国に新製品の開発や技術サービスを担う「東麗先端材料研究開発」(上海市)を持つ。こうした開発拠点では「現地の顧客から次々に新たな要望が出てきており、従来の枠組みでは対応しきれなかった」(東レ環境・モビリティ開発センター技術マーケティング室主幹の吉木久貴氏)という。

 例えばEV用のモーター部品では、使う材料や要求特性が顧客によって大きく異なる。モーターに限らず、さまざまなEV部品で顧客要求の多様化が進んでいる。新組織では欧州と中国の両拠点と連携して、ニーズを細かく抽出し、自動車メーカーやティア1の課題を共有するとともに、その解決策を模索していく。

東レのコンセプト車「TEEWAVE」
東レのコンセプト車「TEEWAVE」
写真はEMCのショールームで展示する「TEEWAVE AC1」。オートモーティブセンター(中国)には「同AC2」を、オートモーティブセンター欧州には「同AC3」を展示している。(写真:東レ)
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