2022年創業のITスタートアップCyMed(サイメド、東京・渋谷)が「次世代型デジタルクリニック」と称する診療所(以下、デジタルクリニック)をオープンした。オンライン診療に主眼を置いており、受診前の健康相談から受診後の服薬指導までをオンラインで完結する。近年、オンライン診療に取り組む医療機関は増えているが、デジタルクリニックは従来の「医療サービスのデジタル化」とは一線を画するという(図1)。
「医療と患者の距離をゼロに」
同社はデジタルクリニックとして、2022年6月に男性向けの「クリニックJo(ジョー)」を、2022年10月に女性向けの「クリニックPino(ピノ)」をオープンした。性感染症やAGA(男性型脱毛症)、ED(勃起不全)など対面での診療をためらう人が多い診療科目の他、体重管理やスキンケアなど性別で悩みや対処法が異なるような領域を主に取り扱っている。
デジタルクリニックの売りは、予約から診察、薬の処方といった提供サービスが全てオンラインで完結することだ。患者はWebブラウザーから予約を申し込み、予約した時間に医師とのオンライン面談を実施し、院内処方された薬が自宅まで配送される(図2)。24時間態勢で受け付けており、専用アプリをインストールする必要もないため、気軽に申し込める。
さらに、受診に先立つ健康相談や診察が終わった後の継続的なフォローなどもオンラインで行う。こうした一連の医療サービスをワンストップで提供するのがデジタルクリニックの最大の特徴だ。個人のペイシェントジャーニーに寄り添ったサービス提供が可能となる。CyMedのCEO(最高経営責任者)の石川博一氏はデジタルクリニックを通じて「医療と患者をゼロ距離にする」ことを目指しているという。
ただし、クリニックJoとクリニックPinoはデジタル空間のみに存在するわけではない。医療法で定められた医療機関である以上、当然リアルの拠点を構えており、患者が希望し医師が必要と判断すれば対面診療も行う。一方で、従来の医療機関がオンライン診療を取り入れている事例は増えている。共に対面診療もオンライン診療も実施するのだとすれば、デジタルクリニックのアイデンティティーはどこにあるのだろうか。