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 DX(デジタル変革)の一環でSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を開発した非ITの事業会社が、コンサルティング会社とSaaSに関してコンサルティングパートナー契約を締結――。2022年10月14日、こんな異例ともいえる内容のプレスリリースが出た。

 非ITの事業会社とは大手リース会社、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)である。同社は、資産管理をはじめとするモノのライフサイクル管理向けSaaS「assetforce(アセットフォース)」を手掛けている。assetforceはSMFLが戦略子会社のSMFLみらいパートナーズと連携して2021年5月から提供してきた。

 一方のコンサルティング会社は、アビームコンサルティング。SMFLとは、旧住商リース時代のころから30年以上の付き合いがあり、assetforceについては、構想・企画・開発段階で支援してきたという。

 ユーザー企業が自社で手掛けるデジタルサービスについて、大手コンサルティング会社とパートナー契約を結ぶのは珍しい。アビームコンサルティングが、SMFLとパートナー契約を締結する決め手は何だったのか。

「自前主義が限界」で協業へ

 アビームコンサルティングがDXに取り組むユーザー企業が開発し提供しているSaaSについてパートナー契約を締結した理由を、同社の山田貴博副社長は「2021年5月の正式リリースのころ、assetforceは、様々な業界のイシュー(課題)に応えることができるソリューションだと評価していた。(SMFLとの協業は)assetforceの企画・開発などを支援する立場を超えて、共創のパートナーとして協議してきた結果だ」と明かす。

 一方、SMFLの黒田淳専務執行役員デジタル担当役員は、assetforceに対するアビームコンサルティングの評価を踏まえて、「assetforceは当社がデジタル先進企業になっていくための中核的なサービスに育てることができる」と考えるようになったという。その一方で、「金融サービスを主業としてきた当社がassetforceを産業界に広く展開していく際、(自社だけで営業活動を進めていくといった)自前主義には限界がある。そこで今回の協業に至った」と説明する。

 「自前主義が限界」とする背景には、「SMFLは金融サービスの会社」というイメージが世間に根強いことがある。こうしたイメージのため、「ビジネスプロセスやサプライチェーンに関する悩み事、改革の相談を当社に持ち込む顧客企業はまだまだ少ない」と、黒田専務執行役員は明かす。

 そこでSMFLは、assetforceを構想段階から支援してきたことでassetforceによる課題解決策を熟知しているアビームコンサルティングと、コンサルティングパートナー契約を締結。これにより、「当社単独では難しいユースケースを創出できる」(黒田専務執行役員)とみている。