原子力発電の新たな選択肢として、小型モジュール炉(SMR)に注目が集まっている。米GE Hitachi Nuclear Energyと日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市)が共同開発する「BWRX-300」は、いくつかあるSMRの中でも、実用化が近い原子炉の1つだ(図1)。6年後の2028年にも、カナダのオンタリオ州営電力会社(Ontario Power Generation)が運転開始を予定している。
一般に、SMRは原子炉の小型化によって初期の建設費用を抑えられる他、安全性も高められるとされる。BWRX-300は、原子力発電所で一般的な沸騰水型軽水炉(BWR)の技術を基に開発された。ただし、従来のBWRとは異なる部分もある。果たしてどのような仕組みなのか。
敷地面積はサッカーコートと同程度
BWRX-300の1基当たりの熱出力は最大870MWt、電気出力は同300MWe(30万kWe)を想定する。原子力発電所の一般的な大型軽水炉(120万kWe程度)と比べると、およそ4分の1の規模である。
モジュール化した部品を工場で製造してから建設予定地に運び込むことで、建設費や工期を従来よりも抑える。また、建設に必要な敷地面積も小さくなる。日立GEニュークリア・エナジー主管技師長の松浦正義氏は「サッカーコートと同程度の敷地内に主要建屋が収まる」と説明する(図2)。
世界ではさまざまな新型炉が開発されているが、実現には長い時間が掛かっている。分かりやすいのが「高温ガス炉(HTGR)」や「高速炉(FR)」だろう。共に国内では1970年ごろから開発が始まり、試験炉も建設されたが、商用化に至っていない。
その点、BWRX-300は、実用化済みの大型軽水炉の構造や部品を流用する。燃料は改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)と同型を採用。燃料をまとめた「燃料集合体」の数を、およそ4分の1に減らして使う。制御棒やその駆動機構の他、蒸気から水分を取り除く気水分離器なども、従来の仕組みを流用する。大きさや形状が異なるものの、圧力容器の材料や製造方法も同じだという(図3)。
「他の新型炉と比べると、技術的な課題は少ない。既に実証された技術と新しい安全対策を組み合わせることで、早い時期の市場投入が可能になった」(松浦氏)。