SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)ベンダー向けに開発や運用を支援するSaaSが相次ぎ登場している。SaaSに共通する基盤機能のひな型を使って開発作業を効率化する「SaaSus Platform(サースアス・プラットフォーム)」と、異種SaaS間のデータ連係やワークフロー管理の基盤機能を提供する「datable(データブル)」だ。
日本は1社当たりのSaaS導入数が米国の1割程度ともされる。SaaSベンダーの開発生産性を高めるSaaSは、日本が「SaaS後進国」を脱する突破口となるか。
認証やテナント管理など、基盤機能の開発工数を7割減
ソフトウエア開発支援のスタートアップ、アンチパターンが2022年11月にも「SaaSus Platform」の提供を始める。先行して同年7月30日にベータ版の提供を始めた。ベータ版の利用料金は無料で、正式版の料金は1社当たり月額10万円程度になる見通しだ。
SaaSus Platformは「Amazon Web Services(AWS)」の上で動くSaaSの開発・運営に必要な基盤機能を一通り備えており、メニューを選んだり簡単な項目を記入したりするだけで各機能の利用有無や詳細な設定を完了できる。具体的にはSaaSの利用単位であるテナントの作成やテナント単位の利用者認証、利用プランの作成、利用者ごとのアクセス権管理、従量課金の基になる利用状況の測定などだ。
例えば利用者の認証機能については、パスワードのほか多要素認証、信頼済み機器の記憶など、必要な認証機能を設定画面で選ぶだけで実装できる。顧客企業向けの料金プランも、「標準プランは基本機能を2人まで利用できて1人当たり月額1000円」「拡張プランは全機能を10人まで利用できて同5000円」などと設定できる。プランの内容に応じて利用できる機能や人数を自動的に制御する。
利用料金については、顧客企業ごとに請求金額を自動的に計算する。さらに米Stripe(ストライプ)の「Stripe」などの外部の決済サービスへ請求データを送って決済処理を自動実行可能だ。
「SaaS事業には従来のパッケージソフト開発に加えて、マルチテナントを運用する基盤機能の開発も必要。SaaSus Platformで基盤機能を開発する手間やコストを省き、中核となる独自機能の開発に専念しやすくなる」。プロダクトオーナーを務める、アンチパターンの矢ヶ崎哲宏CTO(最高技術責任者)兼COO(最高執行責任者)は、サービスの意義をこう説明する。同社の試算によれば、基盤機能の開発工数を7割削減でき、浮いた人員を中核機能の開発に回せるという。