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 光沢のある金属表面の温度は、非接触で測れない――。そんな常識を打ち破ろうとしているのが大手計測機器メーカーの堀場製作所だ。同社は、既存の放射温度計を使いながらも、測り方や補正の計算方法を工夫して、光沢のある(反射率が高い)金属などの表面温度を高精度で測定する新たな手法を開発。「計測展2022 OSAKA」(2022年10月26~28日、グランキューブ大阪)でその技術を披露した(図1)。

 一般に、反射率が高い物体の表面温度を非接触で測ろうとすると、外乱光の影響を受けて正確に測れない場合が多い*1。これに対して、同社は2種類の測定手法を考案した。「波長差分方式」と「角度差分方式」の2つの差分方式だ。

 前者は検出波長の違い、後者は計測角度の違いによって物体の反射率が変化する現象をそれぞれ利用している(図2)。いずれも「反射率の違いで生じた入射光のエネルギー差を基に、外乱光の影響を除いて測定対象が放出した電磁波のみを算出する方式」(同社)という。

図1 「波長差分方式」による温度測定のデモンストレーション
図1 「波長差分方式」による温度測定のデモンストレーション
樹脂コーティングしたアルミニウム(Al)合金の表面温度を測定した様子。放射温度計の測定点から反射した位置には、約80℃に加熱したホットプレートを設置した。波長差分方式で測定した表面温度(67.3℃)が熱電対で直接(接触式で)測った温度(65.5℃)と近い値を示していた。これ対して、従来方式では96.2℃を示しており、ホットプレートからの影響を受け、値が大きくずれた。(写真:日経クロステック)
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図2 検出波長や計測角度と反射率の関係
図2 検出波長や計測角度と反射率の関係
波長と反射率の関係(上)と計測角度と反射率の関係(下)の例。反射率に違いが出る2箇所(図中の赤丸)のエネルギー差から、測定対象の温度を算出する。(出所:堀場製作所の資料を日経クロステックが撮影)
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*1 反射率の高い物体の温度測定では、太陽光や蛍光灯、工場の壁面や天井の温度変化、周囲を通過した人など、電磁波を放つさまざまな物体からの影響を受ける。

 波長差分方式では、検出波長の異なる2つの放射温度計(温度検出モジュール)を使う(図3)。金属板などからの電磁波をハーフミラー*2を使って2つに分岐させ、それぞれ別の温度検出モジュールで計測する。2つの波長の入射光のエネルギー差から温度を算出する。ただし、各検出波長の反射率は、測定対象ごとにあらかじめ把握しておく必要がある。

図3 波長差分方式の原理
図3 波長差分方式の原理
原理を示した概念図(左)と試作した波長差分用放射温度計の概要(右)。(出所:堀場製作所の資料を日経クロステックが撮影)
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*2 ハーフミラー 入射した光を半分透過して半分反射する鏡。

 計測展2022 OSAKAでは、温度検出モジュールやハーフミラーを1つの筐体(きょうたい)に収めた波長差分(方式)用放射温度計の試作品を出展した(図4)。図1で示したように、温度測定のデモでは、同方式で測定した表面温度(67.3℃)が熱電対で直接測った温度(65.5℃)と近い値を示していた。試作品の製品化に関しては未定。

図4 波長差分用放射温度計の試作品
図4 波長差分用放射温度計の試作品
奥側の直方体のものが試作品。手前側の円筒のものは、従来方式として比較した同社の放射温度計「IT-270」。(写真:日経クロステック)
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