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 旧日本陸軍の「九五式一型練習機」を復刻製作する「『赤とんぼ』復元プロジェクト」が進んでいる(図1)。かつて同機を製造していた「立川飛行機」の後身に当たる立飛ホールディングス(東京都立川市)が、創業90周年を機に2015年から記念事業として開始。3機を製作して飛行させる計画だ。

図1 九五式一型練習機の復刻機
図1 九五式一型練習機の復刻機
ほぼ完成した胴体の骨組み。(写真:日経クロステック)
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 九五式一型練習機(キ9)は1934年に初飛行して1935年に旧陸軍に制式採用され、初歩課程を終えた練習生が次に乗る中間練習機として、数多くの操縦員を育てた*1。1935年度から1943年度まで合計2618機が生産され、この数は旧陸軍の飛行機として6番目に多い。オレンジ色に塗られていたことから「赤とんぼ」と呼ばれた、立川飛行機を代表する製品といえる(図2*2。九五式一型練習機には甲型と乙型があり、復刻するのは乙型(九五式一型乙練習機)だ。

図2 九五式一型練習機
図2 九五式一型練習機
コンピューターグラフィックスによる再現。(出所:オリンポス)
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*1 「キ9」は陸軍が付けた試作番号。「キ」は「機体」の頭文字で、陸軍は新開発の機体に通し番号を付けていた。
*2 旧日本海軍で同じ位置づけにあった「九三式中間練習機」など、他にもオレンジ色に塗られて「赤とんぼ」と呼ばれた機体がある。

 基本的な同機の構造は、胴体は鋼管を溶接した骨組みに羽布張り、主翼は木製の骨組みに羽布張りであり、当時の飛行機としては一般的な構造だ。ただし、尾翼の安定板をアルミニウム合金のセミモノコック構造(外板として羽布ではなく金属などの板を張り、機体にかかる負荷を骨組みだけでなく外板にも受け持たせる構造)にするなどしている。製作を担当するオリンポス(東京都青梅市)代表取締役の四戸哲氏いわく、「その後の飛行機の発展を先取りした過渡期の特徴が見られる」という。

 立飛ホールディングスはプロジェクトの目的を「かつて立川で約1万機もの飛行機が製造された。科学技術の最先端を誇っていたこのまちの歴史を地域の子どもたちに伝えるため」と位置づける。復刻機の製作は当初計画よりは遅れたが、2022年秋には1号機が8割ほど完成した。四戸氏は「創業100周年に当たる2024年には何とか飛ばしたい」と意気込む。時間がかかったのは、細部仕様を決定して図面を確定させる作業、すなわち設計だ。