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 米国の複数の電池メーカーが相次いで、18650型円筒形電池で体積エネルギー密度800Wh/L、電流容量では4000mAhを超えるセルを試作した。

 18650型円筒形電池は、直径18mm×長さ65mmの円筒形の電池。パナソニックが米Tesla(テスラ)に当初供給していた形状と寸法である。パナソニックのこの形状の市販の製品「NCR18650GA」は電流容量が3450mAh、体積エネルギー密度が約751Wh/L、重量エネルギー密度が259Wh/kgだった。

NanoGrafは米陸軍向けに開発し、日本で量産か

 これに対して米NanoGrafが2022年10月20日に発表したのが、体積エネルギー密度が810Wh/L、電流容量が4000mAhのリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)である。負極にグラフェンと酸化シリコン(SiOx)から成る独自のSi系材料を用いているのが特徴だ(図1)。

図1 NanoGrafのSi系負極材料と電池セルのイメージ
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図1 NanoGrafのSi系負極材料と電池セルのイメージ
(画像:NanoGraf)

 NanoGrafはこの電池を米国防総省(Department of Defence:DoD)の開発プロジェクトの中で開発した。DoDから100万米ドル(約1.5億円)の助成を受けているという。同プロジェクトでの目標は、体積エネルギー密度が870Wh/L、電流容量が4300mAhの18650型円筒形電池である。

 充放電サイクル寿命は明らかにしていないものの、「エネルギー密度が高くてもサイクル寿命は低下しない」(NanoGraf)と主張する。2024年第2四半期にはセルを量産し、2024年後半には電池パックも製造する計画だ。想定ユーザーは米陸軍で、兵士に持たせるのだという。既に量産工場を千葉県市原市五井海岸に構えているとする。