全2422文字
PR

 帝人は2022年10月、入退院調整システムを手掛けるスタートアップの3Sunny(スリーサニー、東京・中央)を買収し、在宅医療領域の取り組みを加速した。帝人は在宅医療関係者間の情報共有を支援するシステムを2015年から展開しており、それと組み合わせて在宅医療の効率化につなげる方針だ。また在宅医療の担い手である訪問看護師向けのオウンドメディアも立ち上げており、将来的には「在宅医療プラットフォーマー」としての立ち位置の確立を目指すという(図1)。

図1 在宅医療領域における帝人グループの取り組み
図1 在宅医療領域における帝人グループの取り組み
入退院調整システムと在宅医療関係者間の情報共有システムなどを組み合わせ、「在宅医療プラットフォーマー」としての立ち位置を目指す。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 帝人が買収した3Sunnyは2016年創業のスタートアップ。入退院の調整業務をオンラインで支援する日本初のクラウドサービス「CAREBOOK」を開発し、提供する(図2)。複数の医療機関に一括で連絡したり、転院先候補の医療介護施設を検索したりできる。2020年1月にサービスを開始し、2022年3月には導入病院数が500を突破した。現在は東京と大阪の病院総数の約3割に採用されるなど成長を続けている。帝人は2020年10月に3Sunnyと資本業務提携を結んでいたが、このたび全株式を取得し完全子会社化に踏み切った。

図2 入退院の調整業務を支援するクラウドサービス「CAREBOOK」の操作画面
図2 入退院の調整業務を支援するクラウドサービス「CAREBOOK」の操作画面
複数の医療機関に一括で連絡したり、転院先候補の医療介護施設を検索したりする機能を提供する。(出所:帝人)
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、急性期病院から地域の他病院など後方施設へ転院するケースでは、患者情報の共有や日程調整などを経て転院先が決まる。現状こうしたやりとりは電話やFAXで行われることが多く、担当者不在による折り返し待ちといったロスが生じており、現場の大きな負担になっていた。

帝人が在宅医療に注力する理由とは

 そもそも、合成繊維など化学品の大手メーカーである帝人がなぜ入退院調整システムのスタートアップを買収したのか。実は、帝人が約40年におよび手掛ける事業の1つに在宅医療がある。「(帝人の在宅医療は)一般的には知られていないが、医療業界の人にとっては、素材よりも在宅医療というイメージの方が強いかもしれない」と同社ヘルスケア戦略推進部門アライアンス推進部長の小野学氏は語る。そして、在宅医療の領域では患者の入退院が重要な要素となる。これが、入退院調整システムを手に入れた理由だ。

 在宅医療が帝人の主要事業となっている背景をもう少し掘り下げてみよう。同社は素材関連の「マテリアル事業」とそこから派生した「ヘルスケア事業」を2本柱としている。ヘルスケア事業では医療機器や医療用医薬品、サプリメント、そして在宅医療などを手掛けている。医療機器や医薬品に比べて素材との関連が薄いように見える在宅医療だが、源流はやはり素材にある。

 帝人は空気を透過させることで酸素濃度を約2倍に濃縮させる「酸素富化膜」を開発し、1982年に日本初の医療用膜型酸素濃縮装置の製造が承認された。これによって呼吸不全の患者が家に居ながら酸素を吸引できる在宅酸素療法(HOT)が日本で始まった。しかし、専門家が常駐している医療機関とは異なり、機器使用中のトラブルなどに患者自身や同居家族などが対応しなくてはならないといった在宅ならではの課題も見えてきた。こうしたトラブル対応をサポートする仕組みを1つずつ整えてきた結果が、今日の帝人の在宅医療事業につながっている。

図3 在宅酸素療法のイメージ
図3 在宅酸素療法のイメージ
(出所:123RF)
[画像のクリックで拡大表示]

 現在は帝人子会社の帝人ファーマ(東京・千代田)がHOTや睡眠時無呼吸症候群(SAS)向けの経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)関連機器を手掛けている。帝人ファーマ傘下には、訪問看護ステーションを運営する帝人訪問看護ステーション(東京・千代田)や、在宅医療に関するサービス提供を行う帝人ヘルスケア(東京・千代田)が含まれるなど、在宅医療はグループを挙げた注力領域の1つになっている(図4)。今回の買収で帝人の子会社となった3Sunnyと併せ、同分野での取り組みをさらに加速させる考えだ。

図4 帝人グループの在宅医療関連の取り組み
図4 帝人グループの在宅医療関連の取り組み
(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]